芸能インタビュー | かりゆし芸能公演

最終更新日:2023年7月18日

かりゆし芸能公演 インタビュー13
女流組踊研究会めばな
代表 山城亜矢乃さん
会員 仲嶺夕理彩さん

2人の写真

女流組踊研究会めばな(以後「めばな」と表記)によるかりゆし芸能公演 組踊「執心鐘入」が、7月21日(金)に国立劇場おきなわ小劇場にて開催されます。沖縄県立芸術大学の大学院を修了した女性メンバーで2012年に設立した「めばな」は、今年で結成から11年目を迎えます。公演の1ヶ月ほど前の6月16日に、「めばな」代表の山城亜矢乃さんと小僧役で出演する仲嶺夕理彩さんに「めばな」設立の経緯から公演に懸ける思いなど、お話を聞かせていただきました。

− めばなを結成した理由を教えてください。

山城亜矢乃さん(以下山城):「めばな」は、沖縄県立芸術大学の大学院で修士課程の組踊を専修して修了したメンバーで構成されています。修了後、私は宮城能鳳先生※1の組踊研究会に参加する機会が多かったことから、舞台に出演するきっかけに恵まれましたが、周囲では組踊に携わるメンバーが少なかったのです。当時、大学で組踊を学んだ修了生から、「あれだけ大学で学んだのに、組踊の出演の機会がなくて寂しい」とか「もっと勉強したい、もっと舞台を踏みたい」という意見がありました。会を立ち上げることも考えましたが、どのようにすればいいかわからず、不安がありました。けれどもある時、東町会館(沖縄県立郷土劇場)で組踊「花売の縁」を女性の先生方のみで演じている公演を見ました。その公演を見て、やっぱり女性だけで組踊の公演ができることを実感しました。会場も多くの人で賑わっていたので、応援してくれる人もいるんじゃないかと感じたのです。
そこからメンバーに声をかけて「めばな」を結成することになりました。2012年12月1日のことです。最初は9人でスタートして、現在は17人になりました。着物はユニフォームとしてお揃いにしています。

※1 沖縄県立芸術大学琉球芸能専攻組踊コースにて指導。現在は同大学名誉教授。2006年、国の重要無形文化財組踊立方の人間国宝に認定。

山城亜矢乃先生

− 結成した際、女性だけで組踊をやりたいということでしたが、最初の活動はどのように始まったのですか?

山城:まずは勉強会から始めました。最初は、玉城朝薫の五番の台本読みから始まり、衣装なども準備していきました。大学院で組踊について研究をしていたメンバーばかりなので、お互いの研究内容も持ち寄りながら、個々のやりたいことを取り入れた研究会の形で活動してきました。そして、結成から2年後にかりゆし芸能公演の応募に至ります。

− かりゆし芸能公演への応募の理由やきっかけについて教えていただけますか?

山城:これからどのような形で「めばな」の存在を発信していけばいいのかなと考えた時に、かりゆし芸能公演が浮かびました。私自身かりゆし芸能公演のスタッフをした経験もあり、素晴らしい芸能公演であることはわかっていましたので、私たちが会を発足した暁には、かりゆし芸能公演で発表ができたらいいねというふうに話をしていました。そして2014年に、組踊をどんなふうに発信していこうか悩みながらではありましたが、かりゆし芸能公演に合ったプログラムを、自分たちで企画して稽古し、公演に挑みました。

公演の写真

− 当時、企画から立ち上げる難しさや工夫したことは覚えていらっしゃいますか?

山城:難しさは特に感じませんでしたが、やはり当時はメンバーがまだ少なかったものですから、少ないメンバーでできる作品を作り上げること、どういう形で私たちの組踊を見てもらうかを考えました。最初は特定のターゲットを定めず、「めばな」の立ち上げ公演として応募し、皆さんに足を運んでいただいた形になりますね。現在は、親子をターゲットにしようと目標を定めて活動しています。

- 初めてのかりゆし芸能公演の記憶は残っていますか?

山城:大学院修了後、(組踊をやるのが)久しぶりのメンバーも多かったので、緊張もすごくありました。稽古の時からなかなかの緊張で、お客様に楽しんでいただけるか正直不安が残る感じだったんです。けれども公演が終わった後は「女性がこんなにできるんだね」というご意見とともに、さまざまな課題が見つかった公演だったので、振り返ってみると出発にふさわしい、いい公演だったなと思います。特に組踊「二童敵討」は、阿麻和利役を男性が演じるのと女性が演じるのとでは違ってきますし、その他の男性役も全員女性で演じていますので、女性が男性役を演じるという点では課題を残す形になりました。ですが、今後私たちが次のかりゆし、次の公演に向けてどういう勉強をしたらいいか、目標が定まっていきました。

- 女性で阿麻和利の役を演じる難しさや、女性ならではの悩みはありましたか?

山城:そうですね、一番は組踊「二童敵討」の阿麻和利の役ですね。「女性でもここまでできるんだ」という意見もあれば、「やっぱり阿麻和利の役は男性にさせた方がよかったのではないか」という意見もありました。男性の役をする女性の方々にとっては、とても課題になった部分でもあったと思うのです。私自身は女性の役や若衆が多く、強吟(チュウジン)を使うような荒事はできなくても、和吟(ワジン)を使うような世話物的な男性の役を演じたことはあります。やはり女性なので、骨格を男性のように変えることはできません。
そういう意味でも男性の役をやる難しさがあり、いかに男性像に近づけていくかというところで、扮装の工夫はしていました。ただ、その扮装に伴わない声質や所作などは、訓練や技術の向上が必要でした。その部分を妥協せずに話し合い、意識して稽古に取り組むことで、成長を感じることができました。私たちは大学院を含めて6年間組踊を学んできたので、できるものだと思っていた部分もありましたが、社会に出ると技術面での幼さが残っていたことを実感しました。
「めばな」が発足してから10年、やっとだなと感じます。今年1月に行った10周年記念公演を通して、特に成長を実感しました。積み重ねてきた結果だと思いますが、まだ足りないところもあると思いますので、妥協せずに志を持ちながら取り組みたいと思います。

山城亜矢乃先生

− 今回の公演で演目を「執心鐘入」に決めた理由や公演で工夫なさっていることはどんなところですか?

山城:組踊「執心鐘入」は玉城朝薫の代表作でもありますし、恋する女性を描くところなど、オーソドックスでわかりやすい内容なので、お客様にも楽しんでもらえ、出演者も楽しみながら取り組める内容になっていることから、こちらの演目を選ばせてもらいました。演じる点でいうと、楽しむということは難しいのですが、やはり10年の間、このメンバーでやってきて「組踊」をしっかり見せられるようになったんじゃないかなと少し思っていますので、今回は、若手に引き継ぎながらやっていきたいなと考えています。何度も何度も役を演じて学ぶという機会はあった方がいいと思いますし、メンバーは流派がそれぞれ違いますので、そういった意味でも「稽古や舞台を通して学ぶチャンスを与えたいね」と若手の起用に重きを置きました。10年の節目を迎えての公演ということもあり、初心に帰るような気持ちもあります。

− 今回の出演者の配役はどんなふうに決めたのでしょうか?

山城:事務局と役員で決めました。(宿の女役の)西村綾織さんも女性役が多い方ですが、「宿の女役は、あまりやったことがない」と言っていましたし、私も見たことがなかったので、しっかりやってもらいたいなという思いから西村さんにお願いしました。そして、薫るような若松は、玉城知世さんにやってもらいます。座主の新里春加さんは、男性の声向きではないんです。どちらかというと女性の高い声なんですけど、「めばな」結成10周年の公演をした時に組踊「万歳敵討」の謝名の子の役ですごく声の変化が出たんです。その時にすごく頑張ったのが見えましたので、さらに頑張ってもらいたいという期待をこめて配役しました。
小僧たちに関しては、今旬の子たちを配役しています。小僧という役を考えたときに、爽やかさというかまだ女性のことをそんなに知らない初々しさを演じてほしいと考えました。当初は、若手メンバーのみで若松と宿の女という案もあったのですが、次の機会もあるので今回は小僧たちに専念してもらう形にしました。

− 本番に向けての取り組みや今回の舞台を通して若手の出演者に期待しているところはどんなところですか?

山城:「めばな」のメンバーは、組踊「執心鐘入」を含めてさまざまな作品を大学で学び、どんな役でもできるような形で修了しています。ですが、役を作り込むという作業は、その配役を担った人たちがやるものと私は考えているので、同じ役でも配役が違うとその人が演じる思いだったり所作や間合いだったりが、全然違ってくるのではないかなと思っています。最終的には、宮城能鳳先生や嘉手苅林一先生※2に指導をしていただきますが、それまでは私の方で、「こうしたら面白いんじゃないか、よくなるんじゃないか」ということをアドバイスし、空気感や距離感を教えるようにしています。
なかには「組踊は作品自体が素晴らしいので、その作品をやるだけでいい」という考え方もありますが、私自身は演じているその瞬間に感じたものとか思いが、舞台をよりリアルに見せ、その空気感が相手に伝わっていくのではないかなと考えています。ただ一方で、組踊は抑制された美をもって表現する芸術ですので、すべての思いを所作に表すことはできません。しかし所作一つに対しても、何も思わずに演じるのと、思いが乗って演じるのとでは違うのではないかと思います。私自身も演じる時はその思いを大事にしています。若手のメンバーには、演じる役への思いをしっかりもちながらやってほしい、頑張ってほしいと期待しています。

※2 重要無形文化財「組踊」保持者

稽古風景

- かりゆし芸能公演は若手実演家の育成を目的として、年齢構成を要件に実施していますが山城さんからご覧になって若手を育てる難しさややりがいはどのようなところで感じますか?

山城:技や組踊の内容的なことでは、あまり難しさは感じていないです。正直みんな忙しくて、時間を作って合わせることのほうが難しいと感じています。若手メンバーの皆さんは素直ですし、アドバイスや指導も素直に受け取ってくれます。もちろん得意不得意は人それぞれありますし、感受性によって受け取り方は違いますが、それはそれでいいと思っています。みんな助言すると実践してくれたり、私が気づかないところには「こんなふうにしているんですけどいいですか?」と、しっかり頼ってくれるのでやりがいを感じます。(仲嶺さんに向かって尋ねる)信頼があるのかな?(笑)それはうれしく思いますね。

2人の写真

- 山城さんが指導に携わってきて心に残っていることや、忘れられないことはありますか?

山城:やっぱり子どもたちに教えるのが一番好きですね。だけど難しいところもあって、私の弟子がある舞台に立った際、本番前に励ましの言葉をかけたつもりが(感極まって)泣き出した経験があるんです。あれは私の中で大失敗でした。励ましのつもりが、かえってこの子にはいらなかったんだと気づきました。本番は無事に乗り切りましたが、この出来事は忘れられなくて。子どもたちが純粋に取り組んでいるからこそ、周りの大人はそれ以上にしっかりしないといけません。あの出来事がずっと印象に残っていますし、子役を出す時には気をつけているところですね。

- 出演者のモチベーションを維持し、継続しながら組踊を続けていこうという気持ちが折れないように工夫していることはありますか?

山城:配役を重視して考えていますね。今回の宿の女と若松のように、主役でもしっかり気持ちがかみ合うような人選を考えて、声の高さや背格好、身に纏っている雰囲気などのバランスも考慮しています。稽古をすると私のモチベーションが上がるので、それにみんなも引っ張られているのかもしれませんね。後ろで見守るよりは、いくぞいくぞと引っ張っているのかもしれません。
年下の子たちからは出しゃばってはいけないという空気が見え隠れするときもあるので、そうではなく、同じ仲間なので切磋琢磨しながらでいいんじゃないかなと思っています。なので、声かけは多い方かなと思っています。ただ時には厳しく言って、空気がピリつく時もあるかもしれません。だけどこの人を良くしたいという思いがありますので、愛情を持って伝えています。そして稽古が終わったら引きずらないように過ごして、基本は楽しめるように、みなさんがやる気になるように心がけています。
私は緩和剤の役割ではないですが、言う時はしっかり言いますし褒める時は褒めています。いろいろな個性を持ち合わせた人たちがいるので、必ずメンバー同士でフォローし合っているように感じます。

- 「めばな」の代表者としてこれから新しく挑戦したいことや、目標に掲げることはどんなことでしょうか?

山城:10年の節目を終えたので、またさらに10年、と思っています。「めばな」もやっと認知されてきて、ターゲットが見えてきました。2018年のかりゆし芸能公演でプロジェクションマッピングを取り入れた親子向けの公演を行ったことがあるのですが、今後もこういった斬新な企画を行いつつ、組踊の入門編として魅力ある伝え方や、古典様式を大事にした創作組踊をもっと手がけていきたいです。その先に「めばな」らしさがあるのではと考えています。
この「めばならしいというのは何なの?」といつも聞かれるんですが、「めばならしい」は後からついてくると思っています。私たちで作るということ、作り上げていく、目標を持ってとにかくやっていこうとすれば「めばならしいね」がついてくると思っているので。
初めの頃は「らしさ」についてとても考えていました。どうしたら「らしく」なるのかって。だけど見当たらないんですよね。そこで、「らしさ」って続けていればついてくるんじゃないかなと思ったんです。初めて公演を見た方は「え?」と感じるはずですけど、10周年公演でプロジェクションマッピングを取り入れた「組踊パレード」は、「らしいね」と仰っていただけたので、そういうことなのかなと今は思っていますね。
みなさんが思う「めばならしいね」という作品作りや舞台上演をずっと続けていきたい、それを見た子どもたちが「めばなに入りたい」と思ってくれるような会にしていきたいなと思います。魅力がないとそうはならないので、その魅力というものをしっかりみんなで考えながら、輝かせながら歩んでいけたらいいなと思っています。

公演の写真

- めばなに入ったのはいつ頃でどんなきっかけからですか?

仲嶺夕理彩さん(以下仲嶺):大学院を修了後、2021年に加入しました。(めばなのメンバーから)お声かけもありましたが、大学院の頃に一度、「めばな」の自主公演に賛助出演という形で呼んでいただいて、そこからみなさんと共演する機会をいただいたことも一つのきっかけです。また、大学院を修了し学校を離れると、学ぶ環境がなくなって、組踊ができなくなるということを実感したことも、めばなへ加入したきっかけでした。大学院では先生たちから教えていただける環境があって、必死に授業を受けて、一生懸命修了作品に取り組んでやってきましたが、修了した途端にそういった場がなくなるということがこんなに大きかったんだって思ったのです。
「めばな」に入らなかったら組踊を学ぶことや、能鳳先生や林一先生、先輩方から手取り足取り教えてもらう環境はなかったと感じています。修了後に先輩方がたくさん悩んだり試行錯誤したりしてきた過去があったからこそ、いま私たちはこうやって舞台に立たせてもらえています。先輩方がたくさん苦労してきたから、この会があるんだと実感しています。10周年の公演にも関わらせていただき、今までは与えられてきたものを課題としてこなしてきましたが、ゼロから公演を作り上げるという感覚を、先輩方に引っ張ってもらいながら、学んでいることを実感しています。

仲嶺夕理彩

- 2年間「めばな」に所属してみて、印象に残っていることや入ってよかったと思うことはありますか?

仲嶺:印象に残っていることはたくさんあります。まず一つは、「めばな」に入ってすぐに男役をいただけたことです。学生時代は若衆の役や女役、子役が多く、男役に当たることが少なかったのですが、加入後すぐに、まさに勇ましく演じる海人という役をいただきました。「めばな」のメンバーはすべて女性ですが、男性役については、先輩方がそれぞれの雰囲気で役を作り上げていて、「私だったらどういう風に演じるだろう」と考えました。自分なりに思いや唱えの低さを意識しながら取り組みましたが、私が今までやってこなかった分野ということもあり、「難しいな」と思い悩みながら舞台に立っていたんです。しかし、終わってみるとメンバーの方から「良かったよ。こうやってチャンスをつかめて良かったね」と言ってもらえて…。「めばな」に入らなかったら、こうして男役を演じる機会はなかったと思うので、本当に入って良かったと思いました。
今回の公演だと小僧3の役を演じているのですが、実はこれまで経験がなかった役なんです。ちょっとした間の使い方がとても大事で難しい役になるのですが、実際のお稽古でも、私なりに間を意識していても、実際には、全然間が取れていなくて…。先輩方には、もっとここで呼吸を置くとか、もっとゆっくり所作を丁寧にとか、本当に小さなことまで細かく丁寧に教えていただいています。また、同じ大学を修了していますが、先輩方が教わった先生方と、私が教わった先生方は違うので、めばなに入ったことで間接的にですが、違う先生方の教えも学べるというのは、とても貴重な経験でもありますし、こんなに細かく知ることができ、深く学べるのはありがたいなと思います。普段のお稽古も舞台の公演も全て印象的です。

- 今回の公演に向けての目標や、稽古中に意識して頑張っていることはありますか?

仲嶺:小僧役には、小僧1と小僧2と小僧3があって、1→2→3の順で年が若く、実際の公演では身長も1→2→3の順で高→低と配役をすることが多いのですが、実は、今回の小僧役の3人の身長は、全員同じなんです。何なら舞台に立つと私が少し高く見えるんですね。それもあって、小僧3という、一番年下で背丈も低く、本当に純粋でまっさらな幼い感じを出すためにというところでは、「どんなふうに演じようか」と考えながらやっています。先ほど先生が仰っていたように、動きを抑制しながらも、小僧たちの思いや生い立ち、毎日どんなふうに和尚さんに叱られて、どんなふうに日々の生活をこなしているのかということを事細かく想像しながら、役を分析しています。
私は作り込みが上手なほうではないと思っているので、そういった背景を自分なりに落とし込みながら、また、とても緊張するのですが、楽しみながら先輩方に食らいついていけたらなと思っています。小僧の役は、息が合わないと間が上手く取れないので難しいですが、他の小僧役は、大学院の同期なので、3人でしか取れない間というものをきちんと稽古を重ねてやっていけたらなと思っています。

稽古風景

- 役作りにおいて、男役をするようになってから、その役のプロフィールを思い浮かべるようになりましたか?

仲嶺: そうですね。(プロフィールを想像することを)始めたのは大学の頃からですが、当時はせりふを読むことや(唱えの)音を取ることに必死だったので、本格的に意識するようになったのは、「めばな」に入ってからかなと思います。きっかけは、やはり大学院を修了をしたことが大きいですね。組踊もそうですし、琉球舞踊も沖縄芝居でも、背景というか、登場人物のバックボーンは考えるようになりました。そうすると緊張がなくなって、呼吸がしっかりできて、体の使い方が柔らかくなると思うので、それが、本番に自然体で表現できることに繋がっていると感じています。
バックボーンを深く考えた演目や人物の時ほど、お客様から反応をしっかりいただけることが多くて、考えること思うことが自分の身体表現とちゃんと直結しているということを、修了してわずかですが実感できたので、それは大事だなと思います。

- 仲嶺さんからご覧になって山城さんについて聞かせていただけますか?
山城さんはどんな存在で、どのように感じていますか?

仲嶺:大学時代、同期の学生を一つにまとめて公演を打つことにとても苦労した経験がありました。「めばな」と同じく、同期は全員女性だったので、その当時は、いろいろと難しいなと思う部分が多かった記憶があります。それを思い出すと幅広い年代の方々が集まった女性のみの団体で、能鳳先生や林一先生、他のメンバーの先輩方と私たち若手メンバーを繋ぐ役割を担いながら、私が想像できないぐらいの仕事量やプレッシャーの中でやってくださっていることを思うと、とても大変なことだと思っています。私たち(若手のメンバー)も大学院を修了したてで、ふわふわしているメンバーですが、ビシッとまとめてくださるのは山城先生なんですね。さまざまな方々がフォローもしてくださるのですが、山城先生がいるだけでいい緊張感になり、その場のみんなの背筋が伸びます。

仲嶺夕理彩

- これからの目標を教えてください。

仲嶺:大学院を修了した後も学ばせていただいて、わからないことがいっぱいあって、まだまだ勉強不足だと本当に痛感しているので、一からちゃんと見直し、学んでいきたいなと思います。今まで学んできたことの振り返りをしっかりして、一つ一つの舞台に丁寧に取り組むこと。また、「めばな」は親子をターゲットにしているので、そこを見据えて、子どもたちやお母さん、お父さん、おじいちゃん、おばあちゃんたちに喜んでもらえるような伝え方を考えながら、ただやるのではなく未来を見据えて、少しずつですが一人の立方として、先輩方と一緒に舞台を作っていけるように、レベルアップしていかないといけないなと思います。

- 琉球芸能の現状とこれから、未来について思うことはどんなことでしょうか?

山城:国立劇場おきなわの組踊の研修生制度に女性の募集はないですが、沖縄県立芸術大学は、女性でも組踊を学べます。私たちは組踊を学んで大学院を修了しましたが、修了後に様々な舞台で起用されるかというと、ほとんど起用はないのが現状です。特に古典の作品は無いです。男性の組踊の良さもわかります。けれど、男女問わずに、いい芸ができる人はいっぱいいると思いますので、舞台を作る側が起用してくれないと、機会の損失や継承する幅も広がらないのではと思います。世界から見ると、組踊ができる方は少ないです。組踊を演じることができて、組踊を好きな人達が舞台を作っているので、女性の立方、地謡も含め女性陣もしっかり起用してくれたらいいなと思います。
現在の小学校では、教科書を通して組踊を学ぶ機会があるのですが、教材として提示されるのは、男性が演じている組踊です。私たちが行ったあるワークショップの中で、お子さんが「自分も組踊をやりたい」と言ったんですね。それを聞いたお母さんが「あんただめよ。女の子だのに」って答えたんです。そのお母さんの中では、すでに組踊は、女の子がやってはいけないということになっていて、私たちは驚いたと同時にとてもショックだったんですね。この兆候は良くないのかなと思いますし、琉球舞踊を習っている女の子も多いので、女の子でも組踊に触れる機会があって、組踊の楽しさを味わって、より多くの人が組踊に携わり学びたい、演じたいと思ってくれたらいいなと思います。
男性起用、女性起用または合同でというように、バックグラウンドの企画内容をしっかり設定していただいた上で、さまざまな起用の仕方があっていいのではないかなと思います。

2人の写真

取材日:2023年6月16日(金)
取材場所:国立劇場おきなわ
(※稽古に参加し、インタビューを行いました。)

プロフィール

山城亜矢乃(やましろ あやの)

女流組踊研究会めばな代表
山城亜矢乃琉舞研究所代表

1975年(昭和50年)沖縄県読谷村出身、小学3年生より琉球舞踊を習い始める。1998年に沖縄県立芸術大学卒業。2002年同大学院(舞台芸術専攻組踊専修)修了。1999年琉球新報社主催琉球古典芸能コンクール(舞踊部門)最高賞を受賞。2002年より沖縄県文化振興会にて臨時職員として「かりゆし芸能公演」を担当。2006年より沖縄県立芸術大学琉球芸能専攻の教育補助嘱託員、2009年より非常勤講師として琉球舞踊、扮装法を担当した。2015年より北谷町生涯学習プラザに勤務しホールプランナーを務め現在継続中。
2012年女流組踊研究会めばなを発足、代表を務め、今年、結成10周年記念公演「女華の組 踊」を国立劇場おきなわ大劇場にて開催、組踊「花売の縁」薪取を務めた。また同会は、組踊普及活動、舞台活動等の功績を認められ、2021年「琉球新報活動賞」(文化・芸術)を受賞。現在は、安座間本流大北満之会師範、琉球きからじ結師範、琉球舞踊伝承者として、国立劇場おきなわ主催公演等に出演、また子役後進の育成指導を行い、新作組踊や創作舞踊を手掛けるなど、多岐にわたる活動を行っている。


山城亜矢乃先生_プロフィール写真

プロフィール

仲嶺夕理彩(なかみね ゆりあ)

沖縄県立芸術大学院修了
柳清本流紋園順乃会教師
女流組踊研究会めばな 会員

仲嶺夕理彩さん_プロフィール写真

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