芸能インタビュー | かりゆし芸能公演

2021年2月1日

かりゆし芸能公演 インタビュー07
沖縄俳優協会 会長 津波盛廣さん

-沖縄俳優協会設立の目的と現在の活動状況についてお聞かせください。

津波盛廣先生(以下津波):伊良波尹吉先生(1886~1951)を初代会長に、沖縄芝居の継承・発展のため、人材育成を行うことを目的に終戦直後に設立されました。設立年については明確な資料がなくはっきりしませんが、昭和21年、22年頃だと聞いています。私が本会に入会した頃は、大宜見小太郎先生(1919~1994)、真喜志康忠先生(1923~2011)など、先達の先生方が大勢所属しておられましたから、総会に出席する際は緊張したものです。そして、より舞台活動をやり易くするため、2013年に一般社団法人化いたしました。
現在、会員数は52名で、30代から80代まで幅広い年代の実演家が所属しています。最高齢は瀬名波孝子先生で、今年で88歳!瀬名波先生は現在も精力的に舞台に上がっておられます。

-沖縄俳優協会では、これまでどのような舞台を上演されてきたのでしょうか。

津波:主に琉球史劇ですね。史劇ものは多くの俳優、舞台装置が必要となるため上演の機会が少ないのですが、本会の組織力を生かして出演者を集め、「首里城明け渡し」、「大新城忠勇伝」(うふあらぐしくちゅうゆうでん)、「護佐丸と阿麻和利」など上演を重ねてきました。法人化の際には、全島縦断公演を企画して2年連続で実施したこともあります。私事で恐縮ですが、2020年7月に新会長へ選出していただきましたので、就任に際し、全島縦断公演を行う計画を立てておりました。ところが、新型コロナウイルスの影響で断念。残念でしたが、仕方ありませんね。

-伊江島村中央公民館で上演を予定していたかりゆし芸能公演が中止になってしまいましたが、芝居を収録したDVDを伊江島へ届けたほか、YouTube配信にも初挑戦するなど、思い切って企画を切り替えました。

津波:打ち合わせで伊江島へ出向いた際、「沖縄芝居はほとんど来ない」という声が上がっていたので、島の皆さんに、何とかして沖縄芝居を見せてあげる方法はないかな?と考えました。それで、芝居を収録してDVDを届けよう!ということになったんです。作成したDVDは島の9ヶ所に配布させていただき、島の皆さんも喜んでくださっていると伺っています。また、せっかく収録するのであれば、YouTubeで配信してもっと沢山の方に見てもらおう!ということにもなって、若手メンバーが配信の準備を進めてくれました。YouTubeを通して、沖縄芝居を見たことがない若い世代の方にも届くのではないか、と考えました。

-配信された「渡地物語」(わたんじものがたり)を鑑賞しましたが、沖縄芝居に不可欠な客席からの拍手や笑い声がない中での熱演でした。無観客での舞台に難しさは感じませんでしたか?

津波:動画を見ていただければわかると思いますが、俳優が面白い仕草をしても客席の反応がなく、「しーん」…。改めて、沖縄芝居はお客様あってのものだということを痛感しました。俳優陣は厳しい状況でよく頑張ってくれたと思います。映像を通して彼らの熱演が伝われば、画面越しでも笑ったり、拍手が上がったりしているはずです(笑)。これまで、計画通りに舞台を実施できないという経験がなかったものですから、新型コロナウイルスの影響とはいえ、稽古の自粛をはじめ、公演の企画内容を見直さざるを得ない状況にもどかしさを感じましたね。

-配信動画には1日100名余の方がアクセスしているようです。

津波:せいぜい10名、20名でも見てくれれば、という気持ちでしたが、昨年11月22日に配信を開始したところ、日に日に数字が上がっていきました!配信開始から間もなく1 ヶ月(12月16日にインタビューを実施)ですが、既に3,000名余の方が見てくださっていて、これには非常に驚いています。まさかこんなに反響があるとは。こうなったら、1万人に見てもらえたら嬉しいなぁ(笑)!(1月22日時点で10000回をこえる再生回数)奥武山公園で「渡地」についての解説を収録し、字幕についても太くて見やすい書体を採用するなど工夫しましたので、それが再生回数のアップに繋がっているかなぁ、と感じています。
YouTubeでの配信は、何だか癖になりそうだなぁ(笑)。海外の方にも見ていただけるチャンスですから、今後は英語訳も必要かなと考えています。

-近年、多くの若手実演家が活躍していますが、若手への印象と期待する点についてお伺いします。

津波:若い皆さんの活躍は頼もしく感じています。ですが、まだまだ舞台数が少ないという現状もあると思います。また、沖縄芝居を得意とする役者は少ないですよね。我々も、公演ごと、演目ごとに本会に所属していない若手の皆さんに声をかけ出演いただいていますが、やはり、稽古だけじゃ時間が足りないし、育てる、というところまではいかない。沖縄芝居でいえば、金城真次くん、嘉陽田朝裕くんに期待しています。若い二人が切磋琢磨して、引っ張っていってくれたら嬉しいなぁ。

-身のこなし、間合い、方言、客席との掛け合いなど、沖縄芝居ならではの「技芸」があると思います。若手を指導する際、大切にされていることはどんなことでしょうか。

津波:初めは、「思う通りにやってごらん」と言っています。するとね、間がもたなくてつい手を組んだり、意味なく動かしてしまうわけですよ。「この手の動きには何の意味があるの?」と問いながら、必要な動きだけを確認していきます。また化粧や着付けでも、なるべく声をかけるようにしています。というのも、若い皆さんの化粧や着付けは綺麗すぎる気がして…。「人間臭さがない」。先輩方の化粧を間近に見ていないので仕方ない部分もありますが、怒る先輩方がいなくなったということでしょうね。これは私が若い頃のエピソードですが、宮城美能留先生(1935~1987)に声をかけていただき組踊に出演した際、私の化粧が白すぎたんでしょうね。「いぇー、やーがる主役やんなぁ」(お前が主役なのか)と言われて。もう僕はハッとして、慌てて化粧を落とし、薄く塗り直した上で顔もうんと汚してね(笑)。なぜ注意を受けたかというと、舞台は綺麗なものばかりでは成立しないからですよ。「汚れ役の中にも、美はある」わけですから。
方言についても、厳しい言い方かもしれませんが、芝居の時だけ方言で話す、ということではなかなかニュアンスが伝わりません。今の時代、方言だけで日常を送るのは難しいですから、せめて、打ち合わせや稽古だけでも方言でコミュニケーションを取るとか、そういう取り組みをコツコツやってみてはどうだろう、と若い皆さんに提案したいですね。

-お稽古や本番を通して、若手の皆さんに感じ取って欲しい点があると思います。それはどんなことでしょうか。

津波:今回、演技指導を瀬名波孝子先生にお願いしましたが、沖縄芝居を指導できる先生方が年々少なくなってきています。ですから若い皆さんには、先輩方から指導を受ける際は、「本当に貴重な時間なんだ」という意識を持って取り組んでいただきたいです。そしてもう一つ。若い皆さんが、5年後、10年後をどう考えているか、ということ。現在、沖縄芝居や組踊を見に来てくださるファン層は、60代、70代が圧倒的に多く、正直、芝居ファンは減少傾向にあると思います。だからこそ若い皆さんが、20代、30代、40代のお客様に喜んでいただける作品を作る必要があるわけです。そうしないと、脂が乗った50代にお客様がいないという事態を招いてしまう。今はまさに時代の転換期。若い皆さんには、沖縄の伝統芸能を大切にしつつ、今の時代を捉えた作品を生み出していって欲しい、そう強く思っています。

-沖縄俳優協会の今後の活動についてお伺いします。

津波:私が会長を務める間に、台本や映像資料をきちんと整理して次世代へ引き継ぎたいと考えています。そして、沖縄芝居の継承・発展のためにも、舞台数をもっと増やしていきたいです。その取り組みの一つとして、大型史劇を上演しようと計画しています。「国難」、「尚巴志と三山」、「玉川王子」などの大型史劇を若い皆さんと一緒につくりたいですね。
僕がなぜ史劇にこだわるかというと、先ほども述べましたが、沖縄芝居の指導ができる役者が減ってきているからです。2016年に与座朝惟氏、2020年に朝惟氏の弟・与座ともつね氏、北村三郎氏と、沖縄芝居の名優が相次いで旅立ちました。幸い私自身、史劇にも出演し、彼らが演じる舞台も数々見てきた世代なので、何とか指導できるだろうという思いがあります。私ももう73歳ですから、ものすごく危機感を持っていますので、今やるしかないわけです。ですが、果たして新型コロナウイルスの影響がいつまで続くのか…。状況を見ながら企画を練り上げたいです。

-これまで舞台に立ち続けてこられた原動力、また、今後叶えたい「夢」はなんでしょう。

津波:大げさかもしれませんが、やはり、沖縄の芸能文化を愛しているんでしょうね。30歳で芸能の道に入った時も、この文化を沖縄から無くしてはいけない!という思いが非常に強かった。だから私自身は役者というよりも、企画する裏方役だと思っています。というのも、この顔ではスターになれないでしょ(笑)。 だから今後も裏方として、企画を立てて積極的に動いていきたいです。僕の夢、それはね、愛媛県の「内子座」、香川県の「金丸座」、この二ヶ所の芝居小屋で沖縄芝居を上演することです。大ボラを吹いて、と関係者に怒られそうですが、これは僕の大きな夢。夢を口にすることは重要でしょ(笑)。ぜひ形にしたいなぁ!

-大型史劇公演、芝居小屋公演など、夢のある企画にワクワクします。沖縄俳優協会、津波先生の今後のご活躍を楽しみにしております。どうもありがとうございました。

取材日:2020年12月16日
取材場所:(公財)沖縄県文化振興会
(※写真撮影のため一時的にマスクをはずしていただきました。)

プロフィール

津波盛廣(つは もりひろ)

一般社団法人 沖縄俳優協会 会長
1948(昭和23)年 那覇市首里生まれ。
20代の頃は外国航路の船員として働きながら、那覇へ戻るたび芝居小屋へ足を運んだという根っからの芝居好き。沖映本館が閉館(1977年)した際、強烈な寂しさに襲われ、「沖縄芝居を失いたくない、僕がやらなければ」と強い使命感を抱く。いつか沖縄芝居の舞台に辿り着くだろうとの思いから、30歳で古謝弘子舞踊研究所へ入門。舞踊「長者の大主」で初舞台。古謝弘子先生のもとで稽古を重ねる中、宮城美能留先生の目に止めていただけるようになり、宮城美能留先生率いる「沖縄歌舞団」の公演などへ出演。さらに、劇団与座の座長・与座朝惟先生ともご縁が生まれ、念願だった沖縄芝居役者として舞台デビューを果たす。1983年に沖縄俳優協会へ入会。その後事務局長を歴任し、裏方としても舞台制作に尽力。2020年7月に会長就任。2006年に設立した劇団「花道」でも後進の育成に力を注ぐほか、脚本・演出を手掛けるなど、沖縄芝居の継承・発展に努めている。

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