2024.02.25 Sun
講師:嶋田 洋平(株式会社 らいおん建築事務所 代表取締役)
日時:2023年11月11日(土)14:00~17:00
場所: 沖縄県立図書館 3階ホール
第9回は「報告会及び講評会」。最終回は、受講生8名が構想するアートプロジェクトについての報告会を実施。その上で、講師の嶋田洋平氏から講評をいただき、プランをブラッシュアップできるような回にするのが狙いだ。
第1部の講義冒頭、「僕は沖縄が大好き。実は二つ目の拠点を沖縄に構えようかと本気で考えていて。沖縄のポテンシャルはすごい。古い建物も残っているし、食も美味い!」と魅力を力説した。嶋田氏は、2008年にらいおん設計事務所を設立し、建築設計を軸に空き家のリノベーションなどを通じて社会や地域の課題解決に取り組んできた。
スタンスは “空き家や空きビルは、豊かな空間資源である”だ。
これまでの取り組みの中から、奥様と共に手がけた6年間のカフェ経営で得た教訓をはじめ、ママ友繋がりから事業に発展したマンション再生事業「目白ホワイトマンション memento」(築40年、約半数が空室だったマンションの一室をらいおん設計事務所が借り上げ、入居希望者と共にDIYでリフォームを進め居住。入居者が入居者を呼び満室となった画期的事業)、また旧態依然の商店街組合の会長として3年間活動した経験などをテンポよくお話しくださった。
嶋田氏曰く、活動の源にあるのは、事務所を作った時の想いだという。「35歳位の時。もう新築をバンバンつくる時代じゃなくなってきていると感じた。空き家を作っているのと同じだなって」。以来、“新築はやらない”と決めたという。現事務所も元々は空き家。「物件も見ずに購入した」と豪快なエピソードの反面、「“建物の価値は路面状況が決める”。それが街の価値になっていく」と、瞬時に建物のポテンシャルを見抜き即購入を決めたエピソードには驚かされた。このビルを事務所にして、1階部分で「神田川ベーカリー」も営むなど、地域コミュティーの場として住民の皆さんに受け入れてもらっている実感があるという。「地域に好きなパン屋がなかったから始めただけで。自分が好きなことで、突き抜けたことがやれたら、人が集まってくる」。力を抜いて面白いと思うことに飛び込む、そういうフットワークの軽さを感じた。
第2部は緊張の報告会。
各受講生が構想するアートプロジェクトプランについて7分間で発表。其々のテーマは以下の通り。
(※内容は割愛させていただきます)
◎真栄城潤一さん
テーマ「うまい飯を食らいたい」
◎宮平未来さん
テーマ「アートコミュニティを育む小さな場づくり『ART CUMP』」
◎久保田真弘さん
テーマ「全ての市民の文化芸術活動を支援する、新たな中間支援組織の設立」
◎加賀屋美絵子さん
テーマ「水上店舗の空き店舗の活用について」
◎ゆりこロウさん
テーマ「ミシュラン一つ星のアート体験@川平」
◎出町考平さん
テーマ「沖縄の『音楽』とはなにか」
◎兼浜克弥さん
テーマ「『ライブアートカフェ』街に必要とされる空間」
◎瀬川辰彦さん
テーマ「ローカル文化 de ショーとショート」
発表を聞いた嶋田さんから、
●それをやると、どんなつながりや広がりが生まれる?
●あったほうが良いけど、誰がやるの?発表1番地味だけどめちゃくちゃ面白い!
●空間じゃなくて、街全体を使った方が良い。
など、時に厳しくも現実的な視点から、計画の意義やあり方についてご指摘くださった。
最後に嶋田さんから受講生へ。
直ぐに実行できそうな計画もあったので、上手く皆さんコラボレーションしてやっていただけたらなって。「先ずは小さく始めてみる」というのが良いと思います。失敗しても死ぬわけじゃないから。
と豪快にエールを送った。
(執筆:具志堅 梢)
講師:嶋田 洋平(株式会社 らいおん建築事務所 代表取締役)
1976年生まれ。株式会社みかんぐみ勤務を経て、2008年らいおん建築事務所を設立。建築設計やリノベーションに加え、全国の様々な都市地域でエリア再生事業やリノベーションまちづくりを行なっている。主な実績として、小倉魚町のエリア再生の実践、和歌山市ぶらくり丁周辺のエリア再生ロプロデュース、福島県国見町藤田駅周辺エリアの再生、島田市本通エリアの再生、泉佐野市さの町場の再生、下関市リノベーションまちづくり、など。主な受賞歴として北九州市小倉魚町でリノベーションまちづくりの実践によって「国土交通大臣賞 」「日本建築学会賞教育賞」「都市住宅学会業績賞」。日経アーキテクチュア「アーキテクト・オブ・ザ・イヤー2017」第2位に選定。主な著書に『ほしい暮らしは自分でつくるぼくらのリノベーションまちづくり』(日経BP社)
「オキナワ担い手未来レポート」を最後までお読みいただき、ありがとうございました!
沖縄アーツカウンシルでは、これからの時代の文化芸術の担い手を発掘、育成することを目的とした「オキナワ担い手未来」に取り組んでいきます。
令和5年度は次代の担い手を対象に、それぞれの活動の推進力強化や創造活動の課題解決に役立つノウハウを文化芸術支援等の専門家による講座から学ぶとともに、その学びを生かして受講生各自の課題解決戦略を考え、提案していく、沖縄文化芸術の未来を担う人材を育成するプログラムとして実施します。
プロジェクトを行うということは、関係性を生み出し、新たな刺激を与え、これからの流れをつくり出すことです。本プログラムでは、すでにクリエイティブな仕事や活動をしている方、まちづくりやプロジェクトを実施したい方、プロジェクトを一から作ってみたい方に向け、実践者を培う“場”としていきます。
~これまでのレポート~
■プログラム概要
■Chapter.1 文化芸術の価値とは何か|講師:中村美亜(九州大学大学院 芸術工学研究院教授)
■Chapter.2 自己組織化できるチームづくりを考える|講師:橋本正徳(株式会社ヌーラボ)
■Chapter.3 「地域芸能」から考える地域の未来|講師:呉屋淳子(沖縄県立芸術大学 准教授)
■Chapter.4 地域のコニュニケーションをデザインする|講師:紫牟田伸子(編集家/プロジェクトエディター /デザインプロデューサー)
■Chapter.5 文化芸術に事業性を持たせるために|講師:小田嶋Alex太輔(EDGEof INNOVATION LLC, CEO)
■Chapter.6 オルタナティブスペースの運営と取り組み|講師:阪田 清子(美術家/沖縄県立芸術大学美術工芸学部准教授)
■Chapter.7 デザインとはどういった術なのか|講師:内間 安彦(アートディレクター/グラフィックデザイナー)
■Chapter.8 アートプロジェクトのディレクションと運営|講師:八巻 真哉(アートディレクター / 沖縄アーツカウンシルプログラムオフィサー)
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沖縄アーツカウンシル「オキナワ担い手未来」担当
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主催:公益財団法人沖縄県文化振興会 (沖縄県受託事業「令和5年度沖縄文化芸術の創造発信支援事業」)