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2024.02.26 Mon

【再掲】アドバイザリーボードによる総評|令和5年度沖縄文化芸術の創造発信支援事業

令和6年度公募開始にあたり、申請にあたっての参考としていただくために令和5年度の審査総評を再掲いたします。
※本記事は令和5(2023)年6月21日公開の内容を再掲するものです。

>>総評のPDFデータはこちらをご覧ください。

アドバイザリーボードによる総評

 沖縄県文化振興会の沖縄アーツカウンシルでは、「沖縄文化芸術の創造発信支援事業」として、沖縄県の多様で豊かな文化芸術活動の持続的発展を図る取り組みを行なっています。前身事業から数えると、沖縄アーツカウンシルによる支援事業は今年で12年目を迎えました。
 
 今回は、総額4114万円の交付予算額に対して、団体26件、スタートアップ5件、個人14件、計45件の応募の中から、団体9件(うち2年目の事業6件)、スタートアップ5件、個人7件の計21件を採択しました。採択率は、団体35%、スタートアップ100%、個人50%、全体では47%です。
 
 昨年度は、総額4600万円の補助額に対して、団体23件中9件(39%)、スタートアップ6件中4件(67%)、個人23件中9件(39%)の計52件中22件(42%)を採択しました。したがって、今年度は補助予算総額が約500万円減少し、採択数も1件少ないものの、全体の採択率は上昇しています。

 選考については、要件・資格審査を終えた全申請案件についてプレゼンテーション審査会を3日間実施し、4日目にアドバイザリーボードが公募要領にある基準に沿って採点を行ない、点数が上位の事業から予算額の枠内で採択しました。採択にあたっては、ボードメンバー全員で議論を尽くしました。

 大変遺憾ながら、全事業を採択することはできませんでしたが、煩雑な応募書類をご準備いただき、プレゼンテーション審査会にご参加下さった全てのみなさまに深く感謝し、敬意を表します。

 採択された21件には、那覇市だけでなく、石垣島、宮古島、今帰仁村、沖縄市、南城市、浦添市等の取り組みがあり、テーマも教育、福祉、地域の歴史、新しい拠点づくりなど、文化芸術を多様な役割や課題対応とつなげる内容が多数見受けられました。採択事業から3つを紹介します。

[応募区分]団体
[事業区分]区分2:文化芸術を次代に引き継ぐ新たな創造発信を伴う取り組み
[事業者名]特定非営利活動法人沖縄イベント情報ネットワーク
[事業名]AI技術を活用した沖縄イベント情報の収集・発信の活性化
文化芸術イベント情報サイトの仕組みにAIプログラムを取り入れ、イベント情報の収集・整理を自動的に行なうことで、数も豊富で多様な沖縄の文化芸術イベント情報をより効果的に発信する事業です。

[応募区分]スタートアップ
[事業区分]区分3:文化芸術を通じて地域の諸課題解決や活性化の促進等に寄与する取り組み
[事業者名]一般社団法人コザミクストピア
[事業名]場所の空間と商人の物語
沖縄市照屋の商店街の歴史を、地図、写真、オブジェ、聞き取り、映像などで商店街の内部にインスタレーション化する事業です。表現を通じて地域の歴史を共有するモデルとなることが期待されます。

[応募区分]個人
[事業区分]区分1:文化芸術団体等の組織力向上・基盤強化に資する取り組み
[事業者名]楠木千珠
[事業名]かまどでつくる琉球菓子伝承事業
古民家のかまどを用いて、琉球王朝時代の菓子文化の伝承と普及に取り組む事業です。沖縄独自の菓子文化の継承・発信の役割が期待され、今後の広がりも楽しみな取り組みです。

 本事業の今年度の募集は今回で終了となりますが、次年度以降の参考までに、審査会を終えたアドバイザリーボードの所見をお伝えしたいと思います。

1) まず初めに、昨年度から続く応募書類の煩雑さを今年度軽減できなかったことを、アドバイザリーボードとしてもお詫び申し上げます。沖縄アーツカウンシルのプログラムオフィサーとともに、次年度までに必ず改善したいと思います。
2)  例年、補助予算総額に限りがあり、応募も多いことから、事業のために必要な現実的な予算額をご申請いただければ幸いです。とりわけ、団体運営資金に活用するために、補助金の趣旨に合わせて事業を立ち上げるような取り組みは健全と思われませんので、ご注意下さい。
3)  昨年度の採択事業の中で、今回2年目の申請において、振り返りや内容の深化が必ずしも十分でないように感じられるものが複数ありました。事業の実施や精算作業で多忙な中、いかに企画をさらに深めるか、ハンズオン支援のあり方も含めて、再検討できればと思います。
4) 上限100万円・1回限りの個人枠には、多様で意義深い応募が多数ありました。個人の取り組みであると同時に、地域や分野内での横のつながりのある提案が多く、一人の個人がアイデアを持つことで地域や分野全体に影響が生まれる、個人の力を再認識できました。

 文化芸術の「観光化」や「産業化」といった、実現性に関する根拠の不確かな取り組みが当たり前のように喧伝される中で、本事業では、足下の歴史と文化を見つめ直し、文化芸術を通じて現在の「生活の仕方」そのものを問い直し、古くて新しい価値観を模索するような試みが多数見られました。伊波普猷の言う「汝の立つ所を深く掘れ、そこに泉あり」がさらに各地域で実践されることを願っております。
 
 今年度はアドバイザリーボードにも石垣島からの新メンバーを迎えました。沖縄の中の多様な文化の可能性をより深めていくためにも、また、地域間の文化体験や文化支援の格差を是正するためにも、今後も離島や沖縄島北部地域からのさらなるご応募をご検討いただければ幸いです。
 
 沖縄県文化振興会は、県の文化行政を補完する目的で設立された公益財団法人です。その中でも沖縄アーツカウンシルのプログラムオフィサーは、それぞれの分野の高い専門性を持ちながら、多様な事業を支援することのできる、極めて貴重なチームです。今年度も採択事業者のハンズオン支援に取り組むとともに、残念ながら採択できなかった事業者のみなさんとも学び合える機会を創出し、まだこの事業を知らない各地の新しい団体、若い世代とのつながりを生み出すことを期待したいと思います。


沖縄アーツカウンシル アドバイザリーボード
大田静男、林立騎、宮城潤、若林朋子