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2024.02.14 Wed

【オキナワ担い手未来レポート】Chapter.8 アートプロジェクトのディレクションと運営

講師:八巻 真哉(アートディレクター、沖縄アーツカウンシルプログラムオフィサー)
日時:2023年10月28日(土)14:0017:00
場所: 沖縄県立図書館  4階交流ルーム

  

 第8回のテーマは「アートプロジェクトのディレクションと運営」。講師はアートディレクターの八巻真哉氏で、沖縄アーツカウンシルのプログラムオフィサーとして、本講座を企画したご本人でもある。

 冒頭八巻氏は、ご自身がアートの世界に飛び込むきっかけとなった映像を上映。それは日本を代表するメディアアート集団、ダムタイプのメンバー古橋悌二(19601995)を追ったドキュメンタリー。「テクノロジーと愛情、滑稽さと切実さが溢れた舞台。一粒の人間として、何かを引き受けて、どう生きるか。これがアートだと感じた」とご自身のアート原体験について紹介した。



 八巻氏の専門領域は現代アート。そもそも現代アートとは?や日本人が抱える現代アートの誤解について。また国内ではアーティストやギャラリーが厳しい状況に置かれている点など、アートの現状について解説した。

 八巻氏がアートプロジェクトの具体例として示したのは、京都府文化スポーツ部文化スポーツ芸術課時代に手がけた「ALTERNATIVE KYOTO―もう一つの京都―」。文化庁の文化資源活用推進事業の助成を得て実現したアートプロジェクトで、アーティスト・イン・レジデンスを取り入れた、京都府域で現代アートの作品展示やデジタルアートによる空間演出を行い、地域の文化資源の魅力を掘り起こし、地域経済の活性化に繋げることを狙いとしたものだったそう。
 このような大規模アートプロジェクトを動かす上で重要な点について八巻氏。「重要なのは基本指針と裏付け。これは戦う術として必須。プロジェクトを実施する人間には、多角的な視点や言葉の力が求められる。」とし、助成金を申請・活用するためには、言葉でもって説得できるかが大切だと語った。




ここで自然と受講生から質問が。

久保田さん:京都の経験から、沖縄を見て、可能性はありますか?
八巻氏:現状では厳しいかなと。色々試してみたいけど、沖縄は、見せられるモノ、批評、ストーリーを描ける人、アートに特化したシンクタンクや、ニーズ調査等を実施する組織があまりない状態。まずは、少しずつ仲間を増やしていきたいなと思っています。

受講生の突然の質問にも本音で答えて下さった。



2部からは、駆け付けた紫牟田信子氏(Chapter.4の講師)にもご登壇いただきトークセッションを展開。

紫牟田氏:実はさっきまで沖縄産業まつりに行ってたんだけど、すごく面白かった!アーティストと組んでリソースできたら、もっと面白くなるのに!って思った。
八巻氏:僕は沖縄に来て2年位。沖縄の人は距離感が独特で、京都とは違う難しさを感じる時がある(笑)。沖縄で窮屈に感じる点は、“どこにどうアプローチすればアポが取れるのかがわかりにくい”こと。
紫牟田氏:アプローチする場所がわからない、それはこの社会全体の問題よね。システムをデザインし直して、もっとシームレスにできたら楽よね。でもこの手の話は1人で考えると大変だから、こういう場はすごく良いなって。
八巻氏:人と出会えて、知識の共有ができる場所を作りたかった。
久保田さん:またまた、少し良いですか?僕はこの講座を通して気づいたんです。アートは商品でもあって、営みでもある。それを分けて議論しないと話が進まないなって。これを紐解けば、きっと扱い方がわかるなって。
紫牟田氏:そこは本当に整理すべき。そうじゃないと次のフェーズが生まれない。
八巻氏:あとやっぱり、沖縄には批評が少ない。必要ない?ともいうのか。“あいつまた言ってるわ〜”って、嫌われても良い。沖縄にはそういう人が必要だと思うんです。
紫牟田氏:私、今日は反省してます。最近アートのこと話してないなぁ…って。今の社会の空気的にも、ガツンとくる表現は発表しにくいし、アーティストがそれを作らなくなっているとも思う。
八巻氏:白旗あげて逃げようよ、アートは。
紫牟田氏:アートは遊び倒すこと。全力でカウンターになれるし本気でバカやれる。そもそも、もう“アート”っていうフレームが足枷になってるんじゃない?アートっていうことばを一回捨てても良いのかも。
八巻氏:時代はもうアートじゃなくてキャンプでしょ!(一同笑)
紫牟田氏:新しいことばを作りたいね。沖縄的なやり方で、何かできるんじゃない?ね、皆さん!

紫牟田氏、八巻氏のアートへの愛が伝わるトークセッション。受講生の皆さんも頷き、考え、時に笑って思いを共有した。


次回は遂に最終の第9回。開催は1111日(土)。
講師は島田洋平さん(株式会社らいおん建築事務所 代表取締役)。
各受講生には「今後取り組んでみたいアーツプロジェクトプラン」について報告を行っていただきます。その上で講師の島田氏にも講評をいただき、最後の講座を締めくくります。

(執筆:具志堅 梢)

講師:八巻 真哉(アートディレクター 、沖縄アーツカウンシルプログラムオフィサー)
2022年より沖縄アーツカウンシルのプログラムオフィサーとして従事。 前職では京都府文化スポーツ部文化スポーツ芸術課に所属し、地域文化振興担当として、京都府域展開アートプロジェクト事業や京都府地域文化創造促進事業等のプログラムディレクターを務める。京都府地域文化創造促進事業では、文化活動を支援する専門人材(地域アートマネージャー)を京都府の広域振興局に配置し、それぞれの地域で文化活動を支援する体制を作っていった。

「オキナワ担い手未来―アーツプロジェクトを実践する人たちを育てる―」とは?

 沖縄アーツカウンシルでは、これからの時代の文化芸術の担い手を発掘、育成することを目的とした「オキナワ担い手未来」に取り組んでいきます。
 令和5年度は次代の担い手を対象に、それぞれの活動の推進力強化や創造活動の課題解決に役立つノウハウを文化芸術支援等の専門家による講座から学ぶとともに、その学びを生かして受講生各自の課題解決戦略を考え、提案していく、沖縄文化芸術の未来を担う人材を育成するプログラムとして実施します。
 プロジェクトを行うということは、関係性を生み出し、新たな刺激を与え、これからの流れをつくり出すことです。本プログラムでは、すでにクリエイティブな仕事や活動をしている方、まちづくりやプロジェクトを実施したい方、プロジェクトを一から作ってみたい方に向け、実践者を培う“場”としていきます。

~これまでのレポート~
■プログラム概要
■Chapter.1 文化芸術の価値とは何か
|講師:中村美亜(九州大学大学院 芸術工学研究院教授)
■Chapter.2 自己組織化できるチームづくりを考える|講師:橋本正徳(株式会社ヌーラボ)  
■Chapter.3 「地域芸能」から考える地域の未来|講師:呉屋淳子(沖縄県立芸術大学 准教授)
■Chapter.4 地域のコニュニケーションをデザインする|講師:紫牟田伸子(編集家/プロジェクトエディター /デザインプロデューサー)
■Chapter.5 文化芸術に事業性を持たせるために|講師:小田嶋Alex太輔(EDGEof INNOVATION LLC, CEO
■Chapter.6 オルタナティブスペースの運営と取り組み|講師:阪田 清子(美術家/沖縄県立芸術大学美術工芸学部准教授)
■Chapter.7 デザインとはどういった術なのか|講師:内間 安彦(アートディレクター/グラフィックデザイナー)

【本ページに関するお問い合わせ】
公益財団法人沖縄県文化振興会
沖縄アーツカウンシル「オキナワ担い手未来」担当
TEL:098-987-0926 
E-mail:info-ninaite@okicul-pr.jp

主催:公益財団法人沖縄県文化振興会 (沖縄県受託事業「令和5年度沖縄文化芸術の創造発信支援事業」)