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2024.01.11 Thu

【オキナワ担い手未来レポート】Chapter.6 オルタナティブスペースの運営と取り組み

講師:阪田 清子(美術家、沖縄県立芸術大学美術工芸学部准教授)
日時:2023年9月30日(土)14:00~17:00
場所: 沖縄県立図書館 3階ホール

  
 
6回のテーマは「オルタナティブスペースの運営と取り組み」。講師は美術家の阪田清子氏。阪田氏は出身地の新潟と沖縄を行き来しながら、「不確かな立ち位置の集合体」をテーマに制作を行なっているアーティストでもあり、主宰するオルタナティブスペースKIYOKO SAKATA studioの運営、沖縄の「芸術・文化」に関わるリサーチや担い手育成などを行うNPO法人racoに関わる他、沖縄県立芸術大学美術工芸学部の准教授として教育にも携わるなど、その活動は多岐に渡る。


 
 
今回は、“なぜアーティストがスペースを運営するのか”、またその意義についてを中心にお話いただいた。
 アーティストの阪田氏が、作品制作を続けながらも一貫して手放さなかったのが、独自のスペースを運営することだった。その原点ともいえるのが、前島アートセンター(※1)の存在だという。「前島アートセンターは、日常の役割や肩書きから解放されたコミュニケーションの場だった。その活動が地域に加給して、住民の皆さんを巻き込んでいった」と、懐かしそうに振り返る。また主宰するKIYOKO SAKATA studioについては、時にアーティストの展示、物販イベント、共同アトリエなど、枠に囚われずゆる〜く空間を維持して続けてきたと話し、「スペース運営の出発点はあくまでも個人から。だからこそ淘汰されないし、無くならない場所になれる」そう強調した。 

 
 
 後半は受講生からの質問タイム。(やり取りから一部抜粋)
質問:瀬川さん
阪田先生が地域に入って活動するのは、アートの灯火を拡散したいからでしょうか?
回答:阪田氏
県外出身者の私が、沖縄での制作活動を続けることに「壁」を感じた際、県内とか県外とか取っ払いたいなって思って。“沖縄という場所を知りたい”そういう気持ちになったのが一番大きかった。
質問:後藤さん
オルタナティブスペースは地域とつながっていくべき?それとも、縛りない、拘らない場所にしていくのが良いのか?
など、受講生の難しい質問にも阪田氏は答えてくださった。



 第2部はワークショップ。課題は「沖縄県立図書館で気になった“場”を事前に撮影し、その場についてディスカッションする」。阪田氏と受講生が静かに館内を回り、其々が気になった場所を直に見て空間を共有。その後、なぜ気になったのかを短く発表し、“なぜ?”を突き詰める形でディスカッションを行なった。狙いについて阪田氏。“同じ場所で同じものを見る”という体感を伴った会話を通して、場所や思いを共有することの楽しさや醍醐味を提示したかった、と話された。


 
 最後に阪田氏から受講生へ。「やはり出発点は個人の思いから。まずは、小さくても良い。1番の近道は“はじめること”かなって思います。」と言葉を送った。
 実践し続ける阪田氏のように、“小さくても良い”と臆せず一歩踏み出してしまえば、案外、どうにかなる!?のかもしれないと思われた回だった。

(※1)前島アートセンター
前島3丁目の旧高砂殿ビルを活動拠点に、2000年代の沖縄のアートシーンを牽引してきた伝説的オルタナティブスペース。20014月に活動を開始し、様々なアート交流イベントを開催。2011年に惜しまれつつ10年間の活動に幕を下ろした。

 第7回は1014日(土)。講師は内間安彦さん。テーマは「デザインとはどういった術なのか」です。

(執筆:具志堅 梢)

講師:阪田 清子(美術家、沖縄県立芸術大学美術工芸学部准教授)
1972年新潟県生まれ、沖縄県在住。美術家。沖縄県立芸術大学美術工芸学部准教授。「不確かな⽴ち位置の集合体」をテーマに、家具や⽇⽤品・⾃然物などを素材として⽤い、⽇常を問いただすインスタレーション作品を発表。近年の主な展覧会に、「Sugar and Salt」SoolSool Center(2021/韓国)、「ゆきかよう舟」ホテル アンテルーム那覇 GALLERY 9.5 NAHA(2020/沖縄)、「Present Passing: South by Southeast」Osage Gallery(2019/香港)、「新・今日の作家展2018―定点なき視点」横浜市民ギャラリー(2018/横浜)、「水と土の芸術祭」ゆいぽーと(2018/新潟)、など。

 

「オキナワ担い手未来―アーツプロジェクトを実践する人たちを育てる―」とは?

 沖縄アーツカウンシルでは、これからの時代の文化芸術の担い手を発掘、育成することを目的とした「オキナワ担い手未来」に取り組んでいきます。
 令和5年度は次代の担い手を対象に、それぞれの活動の推進力強化や創造活動の課題解決に役立つノウハウを文化芸術支援等の専門家による講座から学ぶとともに、その学びを生かして受講生各自の課題解決戦略を考え、提案していく、沖縄文化芸術の未来を担う人材を育成するプログラムとして実施します。
 プロジェクトを行うということは、関係性を生み出し、新たな刺激を与え、これからの流れをつくり出すことです。本プログラムでは、すでにクリエイティブな仕事や活動をしている方、まちづくりやプロジェクトを実施したい方、プロジェクトを一から作ってみたい方に向け、実践者を培う“場”としていきます。

~これまでのレポート~
■プログラム概要
■Chapter.1 文化芸術の価値とは何か
 | 講師:中村美亜(九州大学大学院 芸術工学研究院教授)
■Chapter.2 自己組織化できるチームづくりを考える | 講師:橋本正徳(株式会社ヌーラボ)  
■Chapter.3 「地域芸能」から考える地域の未来 | 講師:呉屋淳子(沖縄県立芸術大学 准教授)
■Chapter.4 地域のコニュニケーションをデザインする | 講師:紫牟田伸子(編集家/プロジェクトエディター/デザインプロデューサー)
■Chapter.5 文化芸術に事業性を持たせるために | 講師:小田嶋Alex太輔(EDGEof INNOVATION LLC, CEO

【本ページに関するお問い合わせ】
公益財団法人沖縄県文化振興会
沖縄アーツカウンシル「オキナワ担い手未来」担当
TEL:098-987-0926 
E-mail:info-ninaite@okicul-pr.jp

主催:公益財団法人沖縄県文化振興会 (沖縄県受託事業「令和5年度沖縄文化芸術の創造発信支援事業」)