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2023.12.27 Wed

【オキナワ担い手未来レポート】Chapter.5 文化芸術に事業性を持たせるために

講師:小田嶋Alex太輔(EDGEof INNOVATION LLC, CEO)
日時:2023年9月16日(土)14:00~17:00
場所: 沖縄県立図書館 3階ホール

 

  
 
 第5回のテーマは「文化芸術に事業性を持たせるために」。講師は小田嶋Alex太輔氏。今回は、アートや文化の担い手が“最も苦手”と言っても過言ではない資金面についての話題。絶対に避けては通れないテーマである。
 第1部は講義で、第2部は受講生による中間発表を実施。それぞれが取り組んでみたいプロジェクトプランについて、4分間のプレゼンテーションを行った。


 
 小田嶋氏はこれまで、国内外のスタートアップ界隈で様々な支援に携わった経験を活かし、2018年にEDGEofを設立。EDGEofは“多様な人材と共創してイノベーションを加速させる社会装置となる場所”が理念だ。「とにかくゼロイチの作業をいっぱいやってきて、死ぬほど失敗してきた人」と冗談っぽく自己紹介。事業性を持たせるために必要な概念を知っていただけたら、と講義がスタートした。

 
 アート的な活動と寄付は相性が良いとしつつも、「寄付だけでやっていくのはしんどい」と小田嶋氏。事業を継続するために欠かせない要素として、資金調達の重要性を説いた他、資金調達の方法(自己資金/融資/助成金/ CVC※1/投資家)、調達コストの考え方についても解説した。他にも、

● 自分たちのアイディアを視点を変えて発想すること
● この事業が他よりどう優位であるか。その部分を自分たちが認識できているか
● 技術的な要素が入っていてscalable(拡張性)であるか
● “スピードと行動力”結局これが一番大事!

などなど、事業性を持たせるために必要な要素に説いた。

 第2部は中間発表。各受講生が緊張の中プレゼンテーションに挑戦。受講生のプレゼンを受けて小田嶋氏から質問やご指摘を頂いた。
(受講生の発表より一部抜粋)

○ゆりこロウさん(料理人)
プロジェクト名『川平で体験するミシュラン一つ星アート』
【内容】石垣は、夜遊ぶ場所がない。おしゃれとアートを楽しめる場所を創出したい


 小田嶋さん:“夜やることがない”ニーズが明確。まさにナイトタイムエコノミー。聞いてみて、後藤さんの企画はもう普通にやれるんじゃないですか?逆に、今やれていない理由が何かあるのでしょうか?

 ゆりこロウさん:やります!(笑)

○兼浜克弥さん(沖縄県精神保健福祉会連合会 副会長)
プロジェクト名『障がい者が自由に表現できる場を地域に創出する』
【内容】こころの病を持つ方が芝居やアートを通して、魂がワクワクできるような空間を地域の皆さんと共創したい。でも私は事務作業が苦手…。経営者向けの別の講座でも学んでいるが、借金も厭わない勇気が必要だと聞いて…。



 小田嶋さん:(笑)借金は勇気の問題では絶対になくて、計画を立ててチームで動けるかが一番大事。数字が得意な人をCFO(最高財務責任者)として仲間に入れましょう。それこそ、皆さんが今学んでいる“チームビルド”の考え方。

 各受講生のアイディアを真剣に受け止め、的確なことばで質問し思考させる小田嶋氏。そのことばには、ボーダレスでクレバーなお人柄が滲んでいた。そして痛感したのは、多くの経験と知識を持つ小田嶋氏のようなプレーヤーが沖縄には圧倒的に足りていない、ということ…。本講座を受講する皆さんに、目下期待が膨らむ。

※1  CVC (Corporate Venture Capital)
事業会社が自己資金でファンドを組成し、主に未上場の新興企業(ベンチャー企業)に出資や支援を行う活動組織のこと。

 第6回は9月30日(土)。講師は阪田清子さん(美術家/沖縄県立芸術大学美術工芸学部 准教授)。テーマは「オルタナティブスペースの運営と取り組み」です。

(執筆:具志堅 梢)

講師:小田嶋 Alex 太輔(EDGEof INNOVATION LLC, CEO)
ビジネスインキュベーションのスペシャリストとして、数多くのスタートアップ立ち上げや企業の新規事業開発に携わる。2018年に設立したイノベーション拠点のEDGEofでは、2年間で世界50ヶ国以上から1万5千人を超える来場者を迎え、数多くのイノベーティブなプロジェクトを展開。コロナにより物理的拠点を閉じた現在も、企業とスタートアップのコラボレーション支援を行う傍ら、日本と海外のイノベーションエコシステムを繋ぐ様々な活動を手掛ける。SaaSなどのWEBサービス全般はもちろん、ゲームなどのエンターテイメント、VR/ARを中心としたメタバース関連技術、不動産テックやフードテックに関して、特に知見を持つ。J-Startup推薦委員、Shibuya Startup Supportグローバルアンバサダー、French Tech Tokyoボードメンバー、German Entrepreneurship 日本代表など。

 

「オキナワ担い手未来―アーツプロジェクトを実践する人たちを育てる―」とは?

 沖縄アーツカウンシルでは、これからの時代の文化芸術の担い手を発掘、育成することを目的とした「オキナワ担い手未来」に取り組んでいきます。
 令和5年度は次代の担い手を対象に、それぞれの活動の推進力強化や創造活動の課題解決に役立つノウハウを文化芸術支援等の専門家による講座から学ぶとともに、その学びを生かして受講生各自の課題解決戦略を考え、提案していく、沖縄文化芸術の未来を担う人材を育成するプログラムとして実施します。
 プロジェクトを行うということは、関係性を生み出し、新たな刺激を与え、これからの流れをつくり出すことです。本プログラムでは、すでにクリエイティブな仕事や活動をしている方、まちづくりやプロジェクトを実施したい方、プロジェクトを一から作ってみたい方に向け、実践者を培う“場”としていきます。

~これまでのレポート~
■プログラム概要
■Chapter.1 文化芸術の価値とは何か
 | 講師:中村美亜(九州大学大学院 芸術工学研究院教授)
■Chapter.2 自己組織化できるチームづくりを考える | 講師:橋本正徳(株式会社ヌーラボ)  
■Chapter.3 「地域芸能」から考える地域の未来 | 講師:呉屋淳子(沖縄県立芸術大学 准教授)
■Chapter.4 地域のコニュニケーションをデザインする | 講師:紫牟田伸子(編集家/プロジェクトエディター/デザインプロデューサー)

【本ページに関するお問い合わせ】
公益財団法人沖縄県文化振興会
沖縄アーツカウンシル「オキナワ担い手未来」担当
TEL:098-987-0926 
E-mail:info-ninaite@okicul-pr.jp

主催:公益財団法人沖縄県文化振興会 (沖縄県受託事業「令和5年度沖縄文化芸術の創造発信支援事業」)