2021.04.13 Tue
伝承の危機にある川平の古謡
川平は石垣市の中でもとりわけ古い歴史を持ち、公民館が中心となって年間26もの祭事が執り行われている。祭事で奉納する古謡はかつて多くの人々が歌っていたが、地域の高齢化に伴って、今は一部の年長者しか歌えない状況になっている。1976年に発行された村誌「川平村の歴史」には、川平の歴史や祭事、行事、慣習などとともに祭事で歌われる雇用も収載されているが、短期間で作成された背景などもあり、不正確な川平方言の記述や誤字脱字もあった。そこで川平公民館は、「川平村の歴史」を再編集して近年の地域の記録なども加えた改編版を出版すること、そして集落で大切に保管されてきたカセットテープに残る古謡を採譜することを決めた。それらを活用して、計画的に古謡の練習などの機会を設けることで、地域文化の伝承の環境整備を目指した。「川平村の歴史」改編の編集委員には、民俗学の専門家も招聘した。
地域に起こった大きな変化
この事業に取り組む中で、川平では大きな変化が起こっている。これまで地域の祭事に参加していなかった移住世帯が祭事に関心を持ち、「仲間に入れてほしい」という要望が公民館に届き始めたのだ。2020年4月の川平公民館定期総会では、公民館の建設以来初めてとなる移住18世帯の入会式が行われた。もともと川平に住んでいる人々の間でも、神事の記録の方言表記や行事のあり方について意見交換が始まるなど、地域を挙げて文化継承の熱意が高まりを見せている。
完成した「新版・川平村の歴史」を活用して、地域の歴史、伝統行事の学び合いや古謡の練習がスタートする。今後は多くの移住世帯も祭事に加わり、数年後にはふたたび多くの人々によって古謡が奉納される日が来ることだろう。
「新版・川平村の歴史」編集委員の皆さん
担当プログラムオフィサーのコメント
45年ぶりにリニューアルされた「新版・川平村の歴史」は、川平の各世帯はもちろん、川平を離れて暮らす郷友会会員の皆さんにも広く配本されました。各家庭で日々手に取られ、行事や暮らしの新たなよりどころとして地域全体で活用されることを期待します。