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2021.04.13 Tue

R2年度支援事業紹介:祭祀を記録した写真による地域の精神文化創出に資する事業(まぶいぐみ実行委員会)

写真の新たな意義や価値を見出す

 沖縄の写真家達を中心とした集団であるまぶいぐみ実行委員会は、自分たちの活動を「写真という芸術行為において、『撮る』『観る』という関係性に加え新たな意義や価値の可能性を模索し、その実践を繰り返す」と説明している。今年度までの3年間は、写真家の比嘉康雄氏と上井幸子氏(ともに故人)が、1970年代に県内各地で撮影した祭祀の写真の展覧会とシンポジウムを、沖縄島地域と、宮古島、石垣島、与那国島など、その写真の撮影地で開催。写真展を通した人々の対話によって、途絶えかけている祭祀を中心とした地域の精神文化や地域共同体の再生に寄与することを目指した。写真を「写された現場に返す」ということ、そして比嘉、上井両氏が同じ祭祀で撮影した写真の同時展示、というまぶいぐみならではの写真展は各地で大きな反響を呼んだ。

 写真展と並行して行われた比嘉作品のアーカイブ作業もほぼ終わり、八重山地域の島々で撮影された70年代の写真を地元に返す(提供する)協議も進んでいる。今後は地域の文化資源として利活用されることが期待される。

 

「新たなイザイホー」に向けて

 今年度、那覇市内で行われた写真展では、久高島で500年以上続いた12年に一度の午年の大祭「イザイホー」を記録した両氏の写真が展示された。「イザイホー」は1978年を最後に途絶え40年以上が経過している。最後の「イザイホー」で神職者となった女性たちが70歳を超えて務めを終えた今、その様子が記録された写真が持つ意味は大きい。新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、撮影地である久高島での写真展は延期を余儀なくされたが、時期を待って開催される。「イザイホー」の写真が島に返されることで当時の記憶が地域で共有され、2026年の午年に向けて、現代でも継承可能な「新たなイザイホー」の可能性が議論される。

写真展オープニング(パレット市民ギャラリー)

 

担当プログラムオフィサーのコメント

比嘉康雄さんと上井幸子さんが、1970年代の同じ日、同じ場所で撮影した作品による奇跡のような写真展シリーズは今年度でいったんひと区切りとなります。おふたりの作品はそれぞれ写真集にまとめられていますので、ぜひお手に取ってみてください。写真の持つ新たな可能性を提示するまぶいぐみ実行委員会の取り組みは今後も続きます。