2026.05.20 Wed
本レポートでは、事業報告会「YUUREEGWa(ユーレーグヮー)2025>2026」の当日の模様について、各事業者の発表とアドバイザリーボードのコメントを要約してご紹介します。
★レポート前編はこちら>> Report(前編)

○H&D合同会社 団体(初年度)/WEBサイト
〈新たな時代に即した 持続的音楽活動支援のための連続講座〉
本事業は、デジタル化・グローバル化が急進する音楽業界において、沖縄県内のアーティストや学生が持続可能なキャリアを築くための実務知識を体系的に学ぶ機会を提供することを目的に実施しました。全9回の講座では、デジタルマーケティング、音楽配信データの解析、国際的な共同制作、法的権利知識など、現代の音楽活動に不可欠な専門領域を網羅。各分野の第一線で活躍する講師を招聘し、会場受講に加え、オンライン配信やアーカイブ視聴を整備することで参加の門戸を広げました。結果、受講者数は当初目標の2.2倍に達し、終了後のアンケートでは「断片的な知識がつながり、具体的な行動変容のきっかけになった」と高い評価を得ることができました。今後は、本講座の出口として位置づける国際ショーケース「Music Lane Festival」との連携をさらに強化し、沖縄発の音楽人材育成プログラムとして定着させ、地域文化の発展に寄与することをめざします。
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○一般社団法人 琉球フィルハーモニック 団体(初年度)/WEBサイト
〈障害の有無に関わらず誰もが文化芸術を鑑賞できる社会環境整備事業〉
障害の有無に関わらず誰もが安心して文化芸術を鑑賞できる環境構築を目的としています。その背景には、これまでの公演をとおして、9割以上の当事者が鑑賞機会の拡充を希望する一方、劇場の合理的配慮が発展途上であるという課題がありました。主な取り組みとして、まず県内の公共ホール23施設を対象にバリアフリー実態調査(訪問・ヒアリング・アンケート)を実施。車椅子席や段差等のハード面は概ね整備されていましたが、視覚・聴覚障害者向けのソフト支援や情報保障機材の常設率は全国平均を下回る実態が浮き彫りとなりました。調査結果は、当事者視点の動線動画と共にQRコードで公開し、利便性を高めました。このほか、専門家や当事者を招いた研修会も実施。延べ受講者の理解度は平均22%向上しました。今後は、著作権処理等の実務面の標準化や、最新のアクセシビリティ情報を集約したポータルサイトの構築が課題。ホールと実演団体が連携し、持続可能な鑑賞環境のモデル化をめざしていきます。


○琉球器楽の会 団体(初年度)
〈琉球箏低十三絃(仮称)の開発により、3つの変革と創造を図る取り組み〉
琉球器楽の会は、歌三線が主の沖縄音楽において、伴奏楽器である「箏」「笛」「胡弓」のみで構成される器楽曲の可能性を広げるため、新たな楽器「琉球箏低十三絃(仮称)」の開発に取り組みました。従来の琉球箏曲における最大の課題は、アンサンブルにおける低音域の不足でした。本事業では、本土の十七絃をそのまま導入するのではなく、琉球箏伝統の「十三絃」という形式と「琉球爪」、および独自の奏法を維持したまま低音化を図ることに成功。これにより、奏者は新たな技術習得の負担なく、既存のスキルを活かして深みのある低音を奏でることが可能となりました。実演では、既存の「ヒヤミカチ節」に、製作した本楽器を加えることで、楽曲に新たな立体感と表情が生まれることを証明しました。この試みは、新機軸の創造のみならず、奏者が自らの足元である伝統奏法を再確認する契機ともなりました。テレビ番組での特集など対外的な反響も大きく、次年度はさらなる改良と、沖縄音楽への定着をめざします。
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○沖縄芝居研究会 団体(3年目)/Facebook
〈沖縄芝居における大道具製作の技能伝承〉
本事業は、沖縄芝居の継承において深刻な人材不足にある大道具技術の保存と、現代の公演環境に適した道具の研究を目的としています。3年目となる今年度は、「携行性と設営効率」に焦点を当て、以下の活動に取り組みました。第一に「折り畳み式パネル」と「井戸」の研究。車両運搬を前提とし、蝶番の活用や支え(人形)の一体化を試みました。安定感や収納面での課題も明確になったが、公演規模に応じて使い分けるという指針を得ました。第二に「転換の効率化」。役者自身が転換を体験・検証することで、舞台上の動きに相互理解が生まれ、暗転時間の短縮と演出における質の向上につながりました。本事業をとおして得た一連の成果は、名護市での公民館公演にて実践。地(屋根・壁)や岩などの新作した大道具を舞台上で運用し、転換用脚本の作成に至るまで、ソフト・ハード両面で大きな成果を上げることができました。ご支援をいただいたこの3年間の知見を糧に、今後も伝統の灯を絶やさぬよう、現代に即したかたちでの継承を続けてまいります。
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○Maeda Lacquer Project(漆工房・前田貝揃案) 団体(2年目)/Instagram
〈琉球漆器螺鈿伝統技術を若者に広げるための「Gateway作品」試作事業〉
本プロジェクトは、沖縄の伝統工芸である「琉球漆器」を、伝統の枠組みに留めない「純粋な素材」として再定義し、若者文化や異業種へと波及させる「GATEWAY」事業を展開しています。ライフスタイルの変化により身近ではなくなった漆器の現状を打破するため、ストリートカルチャーやゴスといった若者文化、アパレル、音楽、木工、革工芸など多岐にわたるジャンルの作家と連携。作家が自身の制作に漆や螺鈿を採り入れるワークショップを通じて、新たな表現の入り口を創出しました。出店した「沖縄産業まつり」では2,000名を超える集客があり、新聞・テレビ等多数のメディア掲載も達成。また、スイスやベルリン、台湾といった海外からも高い関心が寄せられており、グローバルな展開がすでに始まっています。今後も産業間の境界を越えて、琉球漆器の技術を現代のライフスタイルに溶け込ませる「次世代の工芸モデル」の構築に向けて邁進いたします。
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○琉球COLLECTION叶 萬矢叶子 個人事業主/Instagram
〈宮古島の織物の機織り体験プログラム造成〉
本事業は、原料不足や後継者難により、年間生産数が激減している「宮古上布」をはじめとする宮古島内織物産業の保存・継承を目的としています。主な課題である職人の収益安定と認知度向上を解決するため、観光客向けの「機織り体験プログラム」の基盤構築に注力しました。期間中は、先進地の視察によるノウハウ吸収、体験用備品の整備、デザイナーによる販促物の制作を行い、受け入れ態勢を整えました。また、国内外の観光客を対象としたモニターツアーや地域住民向けの体験会を実施。アンケートを通じて工程の難易度や時間配分の課題を抽出しました。今後は、職人の制作活動と両立できる柔軟な運営体制を構築するとともに、ターゲットに応じた適正価格の設定と情報発信の強化に取り組みたいと思います。機織り体験を通じたファン層の拡大と職人への還元スキームを確立し、伝統技術の持続可能な継承と産業化をめざしていきます。


○沖縄(うちなー)ファミリーヒストリープロジェクト実行委員会 団体(2年目)/Instagram
〈沖縄(うちなー)ファミリーヒストリープロジェクト〉
本事業では、沖縄移民の歴史を「自分事」として捉え、多文化共生や自己理解に繋げる教材開発と普及に取り組みました。2年目となる今年度は、中学生から大人まで約220名を対象に、計8回のワークショップ(ハワイ編・ブラジル編)を実施。特に石垣島では、ハワイと八重山の重層的な歴史を学ぶ特別版を行い、地域特有の文脈に即した独自の学びを創出しました。教材化にあたっては5名の専門家が監修。移民の苦労だけでなく「現地社会の受容」という双方向の視点や、運営メンバー自身の背景提示による多様性の促進など、内容の深化を図りました。参加者からは「ルーツを知りたい」「現代の戦争と多文化共生を考える契機になった」との声が寄せられ、歴史が現在と未来に接続される手応えを得ました。今後は2027年の「世界のウチナーンチュ大会」を見据え、コンテンツの多言語化や学校現場のニーズに合わせた設計を進め、教育・文化の新たな切り口として本活動を継続して発展させていきます。
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○公益財団法人沖縄県女師・一高女ひめゆり平和祈念財団立ひめゆり平和祈念資料館付属ひめゆり平和研究所 団体(3年目)/Facebook
〈“ひめゆり”を伝えるワークショップ開発・実践プロジェクト〉
本事業は、戦争マラリア学習が中心の八重山地域において、ひめゆり学徒隊の体験を通し沖縄戦の実相を伝えることを目的に実施しました。事業の柱となる「移動展」では、八重山出身の生徒・教師に焦点を当てた展示を実施。28日間で974名が来場し、「身近な問題として関心を持てた」と好評を得て、追加開催や学校現場への図録の普及(約60冊)につながりました。また、新たな学びのかたちとして2つのワークショップを開発。イラストを用いたフォトランゲージでは、地元の先輩の体験を可視化することで中学生らの主体的な関心を引き出すことができ、手応えを掴みました。アナウンサーと共同企画した「朗読ワークショップ」では、遺族の手記を声に出して表現することで、悲惨な体験を現代の視点で共有する場を創出しました。今後は、教育現場での図録活用を推進するとともに、広報体制の強化、本事業の知見を活かした台湾での展示会開催をめざしていきます。
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○株式会社シネマ沖縄 団体(初年度)
〈琉球・沖縄の歴史文化を学ぶ映像コンテンツの社会実装と普及モデル構築事業〉
学校教員からの要望を受け、児童・生徒が琉球・沖縄の歴史を体系的・空間的に理解するための映像コンテンツ制作と、その活用モデルの構築を目的とした本事業。主な取り組みと成果は、教育現場との共同開発体制を構築し、週1回程度の協議を通じて、授業で即活用可能な「指導案」や「ワークシート」を映像とセットで展開できるように試したこと。実証実験では、タブレット端末を活用した探究型学習における映像の有効性を確認し、教員の負担軽減と授業の質向上に寄与するアーカイブ化の基盤づくりをめざしました。離島を含む各地でのヒアリングやシンポジウムを通じて、地域ごとの歴史観を反映させた多角的な視点の重要性を集約しました。今後は、制作工程の最適化を図るとともに、各教員が作成した指導案を全県的に共有するデータベースの構築をめざします。併せて、教育現場のみならず、観光や生涯学習分野への普及を見据えた、持続可能な運営ルールの策定を推進していきたいです。
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○NPO法人COuSA 団体(初年度)/WEBサイト
〈【名護市中山区】総合学習のプログラムデザインを活用した伝統芸能と文化の継承〉
本プロジェクトは、名護市中山区を舞台に、「文化継承が持続可能な地域学習」をテーマに実施しました。人口約300人の中山区は琉球国由来記にも記される歴史ある集落ですが、少子高齢化が進み、屋部小学校中山分校の学校統廃合の危機に直面しています。私たちは、地域の誇りを可視化するため、300年続く伝統行事や住民の想いを記録した映画を制作しました。このプロセスを通じ、子どもたちが地域の価値を再発見し、自らのアイデンティティを育む環境を構築することができました。一方で、映画に出演してくださった地域住民に対して、撮影許可等の合意形成が十分ではなく、課題も残りました。今後は、異なるステークホルダーが主体的に関わる「コレクティブ・インパクト」の精度を高め、より強固な地域共創モデルをめざしていきます。
※コレクティブ・インパクト=市民、行政、民間事業者、NPO等が、異なる立場を超えて、互いに強みやノウハウを持ち寄ることで、社会課題解決を図ること。

金 惠信(キム ヘシン)委員
私は去年から本事業に関わっておりまして、報告会への参加は初めてでございます。昨年の審査会の時から感じていることですが、本当に多種多様な取り組みがギュッと詰まっているということ。今日の報告会を例えるならば、贅沢な「分厚い図録」を一気にめくるような感動の連続でした。情熱と長年の蓄積が結集した各プロジェクトの尊さを感じますし、この分厚い図録こそがまさに、私たちが生きてきた歴史であり、営みであると感じました。各プロジェクトの根底にある地域への深い愛を大切にしながらも、それを公的な場で「相対化」して伝え、他者と気づき合い、響き合うプロセスにこそ、本事業の真の意義があるのではないかと感じます。沖縄の文化を軸に、背景の異なる人々が互いを意識し、高め合うこの尊い営みに、私自身加われたことを有り難く思います。
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林 立騎 委員
今年度の事業は社会に深く根を下ろした素晴らしい取り組みばかりでした。事業者は支援を受けますが、むしろ行政やアーツカウンシル側が学ぶべきことが多いと感じます。「ハンズオン(伴走型)支援」の概念を根本から捉え直す必要がありそうです。アーツカウンシルは次年度、予算拡充の方向だと伺っています。これは素晴らしい成果です。文化芸術振興会は県の文化行政を補完する外郭財団ですから、今後はさらに、個々の取り組みを、観光・福祉・教育と枠組みに囚われず広い視野で貪欲に発見し、県の施策へと発展させていくことが求められるでしょう。振興会に出向している県職員の役割も県文化行政への接続にあると考えます。製作・保管場所の不足など事業者の切実な課題に対しては、相互に知恵を出し合い、組織の壁を越えたサポートを急がねばなりません。変化の激しいこの時代に、文化芸術の場に「根本から考え直し、学び合う」動きがあることは希望です。14年間の活動の蓄積を活かして、今後さらに、官民一体で地域社会の新しい土台を育ててほしいと思います。
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大田 静男 委員
今年度、採択を受けた皆様のたゆまぬ努力と成果に、心から敬意を表します。僕は石垣島出身です。沖縄文化芸術振興会の下地誠理事長は、私と同じ先島に縁のある方ですから、今後、これまで以上に宮古や石垣といった離島地域へも積極的に足を運び、現地の声を拾い上げながら文化の種をまいていく活動をさらに広げてほしいと願っています。と言いますのも今年度、先島地域への助成が宮古島の一事業だけでしたので、もっと増やしてほしいな、そういう要望です。助成金は単なる資金援助ではなく、皆様の「情熱」を「形」にするための大切な糧ですから、「これだけの目標を成し遂げるために、このくらいの予算が必要なのだ!」という、そういう強い決意を持って、時には、恐れず声を届けてください。皆様の真っ直ぐな想いが、次年度も豊かな文化芸術の輪となって広がっていくことを楽しみにしています。1年間、本当にお疲れ様でした。
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若林朋子 委員
沖縄アーツカウンシルに関わって早4年となりますが、毎年どのプログラムも似通うことなく独自の輝きを放っていることに改めて感銘を受けました。文化とは、それを担う「人」一人ひとりの歩みそのものなのだと、皆さんの発表を通して強く実感しています。事業を実現する過程では、7分間という短い発表時間では到底語りきれない悩みや失敗、葛藤もあったと思います。アーツカウンシルは、そうしたことも安心して分かち合えるような、より深い学び合いの場になっていけたらと願っています。採択に至らなかった方々とも、この場でつながり、ともに未来を描けるような広がりを目指したい。各事業者の軌跡とことばが詰まった事例集にもぜひ目を通していただきたいですし、この大切な対話の時間を、次の一歩への糧にしていければ幸いです。
執筆:具志堅 梢
写真:照屋 寛佳
構成:沖縄アーツカウンシル
令和7年度の全22事業者による事業報告会「YUUREEGWa 2025>2026」では、午前10時から午後6時まで、約8時間にわたってさまざまな発表や質疑、議論が交わされました。また、関連イベント「ワークショップマルシェ♪」では、一般社団法人琉球迦陵頻伽、沖縄ファミリーヒストリープロジェクト実行委員会、やんばる珍道中実行委員会の3事業者に、たのしいワークショップ体験やすてきなパフォーマンスを行っていただきました。お忙しいなかご来場いただいた方々をはじめ、アドバイザリーボード委員のみなさま、事業者のみなさま、関係者のみなさま、沖縄アーツカウンシルに関心をお寄せくださったすべての方々に、この場を借りて感謝申し上げます。
全事業者のプレゼンテーションや、アドバイザリーボードを含むさまざまな人々との対話から、たくさんの「問い」が生まれました。それらは、「ハンズオン支援」のそもそもの定義や、沖縄アーツカウンシルそれ自体のあり方さえも問い直すものでした。行政や民間が「支える側 / 支えられる側」という関係性を超えて、ともに考え、試行錯誤を重ねていくことの意義が、県民はじめ多くの読者に届くことを願っています。
令和8年度、沖縄アーツカウンシルは設立15年目の節目を迎えます。沖縄アーツカウンシルは今後もより一層、沖縄の文化芸術を担う人々の「寄合場(ユーレ―グヮー)」としてあり続けられるよう、事業のさらなる発展に努めてまいります。
沖縄アーツカウンシル プログラムオフィサー 一同