2026.05.20 Wed
令和7年度も「YUUREEGWa(ユーレーグヮー)2025>2026」(沖縄のことばで“寄り合い場”)と題して、3月20日(金・祝)に那覇市第一牧志公設市場3階多目的室で事業報告会が開催されました。今年度支援を受けた22事業者が一堂に会し、この1年間で取り組んだことや得られた成果について、また残された課題等について報告を行いました。報告会の関連企画として、「ワークショップマルシェ♪」を初開催。多種多様な領域で活動を実施した3事業者に協力いただきワークショプを展開し、参加者の交流の場を創出して会場を盛り上げました。本レポートでは、全22事業者の発表とアドバイザリーボードのコメントを要約してお届けします。
>イベント概要はこちら https://www.okicul-pr.jp/oac/topics/yuureegwa20252026/
>事業者概要はこちら https://okicul-pr.jp/oac/wp-content/uploads/2026/03/R7_jireishu.pdf

○一般社団法人琉球迦陵頻伽 スタートアップ(初年度)/WEBサイト
〈琉球横笛演奏の技術継承および、魅力の創出と周知事業〉
私たちは支援を受けて、琉球横笛の技術継承と魅力発信事業に取り組みました。琉球横笛は三線に比べ演奏者が約10分の1と少なく、認知度の低さや教授法の未確立から初心者が定着しにくい課題がありました。本事業ではこのサイクルを打破する基盤づくりを目的に、主に三つの施策を実施しました。①演奏機会が少ない「端節(ふぁーぶし)」に焦点をあて、琉球横笛に特化した録音物を収録(80曲)。②琉球横笛は手元が見えない楽器であるため、その特性を補う「指譜」を考案、併せて譜面と指の動きを連動させた解説動画31本を開発。③これらを活用したワークショップを展開しました。特にワークショップは当初定員(20名)を大幅に上回る50名にご参加いたいだき、反響の大きさに驚きました。個別指導とLINEによる復習支援の結果、12名もの継続学習者が誕生し、予想以上の成果を得ることができました。
今回私たちは精一杯やった、そういう気持ちです。ご支援をいただき整備した教材や基盤を有効に活かして、引き続き残る音源の録音、継続学習者の支援と教材レベルの向上、さらには離島や遠隔地へのオンライン展開も実施していきたいと思います。
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○ONEVEX production. スタートアップ(初年度)/WEBサイト
〈「沖縄の心を学ぶ」東京スクール開講プロジェクト―先人から想いを紡ぐ身体表現の学び―〉
沖縄の民族芸能「エイサー」は、県外・海外で広く普及が進む一方で、「文化的・歴史的背景の理解」と「基礎技術の習得」を学ぶ機会は十分にありません。本事業は、県外における沖縄文化への理解と関心を深めることを目的として実施しました。今年度は計3回(6日間)、東京都内のスタジオでエイサースクールを開講。伝統芸能のエンタメ化と教育メソッドを融合させ、座学・ストレッチ・基礎練・演舞習得を組み合わせた独自のプログラムを提供することができました。参加者数は回を追うごとに増加し、最終回には定員を大幅に上回る31名にご参加いただきました。アンケートでは満足度94.8%を記録し、中でも「文化や歴史への理解」については参加者全員が「深まった」と回答。ある参加者からも「2日間で1年分以上の学びがあった」(エイサー歴15年)と評価をいただき、指導の質の高さを証明できたほか、目的である「文化的・歴史的背景の理解」と「基礎技術の習得」を達成することができたと感じています。今後の課題は、多世代交流に伴う習熟度別のクラス編成や安定した会場確保が挙げられます。今後はこれらの課題を解消して、沖縄観光への関心促進や文化継承の場として首都圏での継続的な開催をめざします。
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○やんばる珍道中実行委員会 団体(初年度)/Instagram
〈希少生物保護の天敵「無関心」をやっつける絵本シリーズ創設のための造形制作および調査〉
本事業は、守るべきやんばるの希少生物への無関心を関心に変えるべく、2024年に誕生した「ヤンバルクイナのチム」の物語やワークショップなどを通じて、希少種保護のための啓発活動を目的としています。今年度は絵本シリーズ制作の立ち上げとして、キャラクターデザインと人形制作、やんばる特別調査ツアー、シンポジウムの開催を軸に進めました。地域の専門家や獣医師、地元の高校生らの協力を得て、フィクションとリアルのバランスを探る現地調査を重ねました。日本最大の野ネズミ「ケナガネズミ」の生態を一日中観察したり、やんばるの森に植生する日本一大きなどんぐりの木など、やんばるの生物多様性を目の当たりにしました。一方でオーバーツーリズムが与える問題にも直面し、考えを巡らせる機会にもなりました。こうして得た知見をもとに、食性や個性を反映した6種7体のキャラクターが完成!また制作した紙芝居を小学校で読み聞かせることも実現し、地元の子どもたちの行動の変容につなげることができました。今後は本命の絵本シリーズの制作に入っていきます。誕生した個性豊かなキャラクターの魅力と物語の力を通じ、やんばるの森の価値を「自分事」として捉えていただけるような、そんな活動を継続して展開していきたいです。
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○沖縄セメント瓦文化会 スタートアップ(初年度)/WEBサイト
〈消えゆく沖縄のセメント瓦をコンテンツ化し、未来に繋げる〉
戦後沖縄の風景を彩りながらも注目度の低かった「セメント瓦」が持つ文化的価値の記録・調査を行い、その魅力を発信し、次世代へつなぐ活動を展開しました。今年度は3つの柱に取り組みました。①ショートドキュメンタリー制作(セメント瓦に関わる人々の物語に焦点を当て、その営みを記録した映像を公開)。②デジタルアーカイブ化・公開(3Dのデジタルアーカイブとメタバース空間による24時間鑑賞可能な「VRミュージアム」を構築)。③シンポジウムとグッズ展開(有識者との対話や3Dプリンタによる模型制作を通じ、IP=知的財産としての可能性を模索)。今回ご支援いただき、県内各地を調査した結果、想定を大幅に上回る250種以上の文様を確認。内50種を3Dデータ化し「VRミュージアム」で展示することができました。調査をとおして、改めてセメント瓦のバリエーションの豊富さに驚かされました。まだまだ新しい瓦が発見できる可能性も非常に高く、県内外からも高い関心が寄せられています。今後は学術的側面の記録やコンテンツの多角化を進め、さらなるファン拡大をめざします。



○一般社団法人楽友協会おきなわ 団体(初年度)/WEBサイト
〈音楽×演劇ワークショッププログラム開発とファシリテーター体験〉
私たちは「社会と音楽をつなぐ」を理念に活動を展開しています。本事業では、劇団TEAM SPOT JAMBLEと協力し、身体表現や言葉の交わりを活かした演劇的手法を取り入れた新たなワークショップの開発に取り組みました。専門家との協議を重ねて、ピアノや合唱の音楽要素に演劇(パントマイムや台詞)を融合させたワークショップを構築。構築したワークショップを実際にアメラジアンスクールで実施した際には、多国籍な子どもたちが日常とは異なる役割を通じ、普段しない丁寧で美しい言葉を発するなど、周囲も驚く変化が見られました。ワークショップをとおして子どもたちの表現の広がりや相互扶助の姿勢が見られ、成果を得ることができたと感じています。外部有識者からは、異ジャンル協働の独自性を評価される一方で、プログラムを詰め込みすぎている点についてご指摘がありました。まだまだ未完成ですが、今回得られた成果を糧に、教育や福祉現場で活用できる汎用性の高いプログラムへとブラッシュアップを続け、音楽と社会の新たな接点を創出してまいります。
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○株式会社RedPro 団体(初年度)/WEBサイト
〈視覚障害と音楽教育の課題解決に向けたプロジェクト〉
本プロジェクトは、視覚障害を持つ声楽家・読谷山こずえさんから、「盲学校に通う小学生にピアノの指導をしてほしい」と声をかけられたことがきっかけで始まりました。読谷山さんが点字楽譜を教え、私がピアノの指導を行うこのレッスンは、私にとってとても理想的でした。今年度は、読谷山さんやアドバイザーと密に連携し、県内福祉団体、沖縄盲学校にもご協力をいただきながら、視覚障害者に対する音楽指導を実践的に学ぶ機会の創出をめざして、沖縄盲学校を会場とした全3回のワークショップを開催しました。ワークショップでは、視覚障害に関する概要を座学で学んでもらった後に、障害当事者と一緒に点字楽譜を体験しながら、当事者一人ひとりの希望に応じた楽器の指導を実践してもらいました。最終的には、多層的なアンサンブルによる発表会を実施しました。また、筑波大学附属視覚特別支援学校の視察を通じて、黒背景に白文字のプログラムの採用や、図形の言語化(読み上げ)など、情報のバリアフリー化に取り組むこともできました。今回の取り組みをとおして、県内の音楽指導者と当事者をつなぐネットワークが構築され、障害の有無にかかわらず音楽を享受できる環境整備への重要な一歩となりました。今後はこの輪を広げ、さらなる課題解決に邁進したいと思います。
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○カラフルコーラスOKINAWA スタートアップ(初年度)/WEBサイト
〈障がいによる分断や子どもの体験格差を改善する新しい芸術表現【手歌】の発信事業〉
本事業は、障害の有無や居住地域による音楽の「体験格差」を解消し、誰もが共に表現を楽しめる社会をめざして取り組んでいます。音楽家や手話通訳士等と連携して創造した独自の合唱形態「手歌(しゅか)」をベースに、本年度は那覇市、浦添市、名護市、久米島の県内各地で手歌ワークショップを実施しました。私たちは、団員の子どもたちに講師役となってもらうなど、子どもが子どもへ表現を伝える「子ども主体」の運営にも力を入れています。実際に、子どもたちは言葉や障害の壁をひらりと乗り越えてくれました。久米島でのワークショップ参加者が、後日地域の祭りで手歌を披露するなど、当初の予想以上の広がりを見ることができました。9月に実施した「カラフルフェスタ2025」でのシンポジウムでは、「障害を背景とする体験格差」をテーマに、情報保障を完備した環境で権利と理解について議論を深めました。今後の展開としては、離島や遠隔地での活動を支えるスタッフ体制を強化し、沖縄発の新しい芸術表現として、持続可能な共生社会のモデルを発信し続けていきたいです。
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○あなたの沖縄 スタートアップ(2年目)/note
〈個人的な体験から沖縄を表現する新たな言葉を獲得するための市民活動〉
本事業は、90年代生まれの世代を中心に、個人の体験に基づいた「自分の言葉」を獲得し、沖縄の多様な課題を語り合える土壌をつくることを目的としています。2年目の支援をいただいた今年度は、前年度の課題であった「継続性」を重視し、4ヶ月にわたる連続型ワークショップを実施しました。作家、写真家、劇作家など多様なアーティストを講師に招き、無料のコミュニケーションアプリDiscordや宿題を活用した日常的なアウトプットを併用することで、参加者同士の深い対話と内省を促しました。具体的には、写真を用いた視点の拡張や、他者の視点を自分の文章に取り入れる共同制作を行い、最終的には成果物としての「ZINE(自主制作冊子)」を完成させ発表会を開催。結果、参加者の表現力向上とコミュニティ形成に大きな成果が見られました。今後は開催地の拡大やプログラムの接続性の改善を図り、より広域での対話の活性化をめざします。
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○NSSB 川門義人 個人事業主/Instagram
〈地域の子ども達と描く~ミーカガン玉城保太郎が現代に蘇る~〉
本事業は、郷土愛の醸成と文化継承を図ることを目的としています。今回は支援を受けて、糸満の海人でミーカガンを考案した玉城保太郎(たまぐすくやすたろう)を題材に、地域の子どもたちと協働して紙芝居を制作し、パネル掲示、糸満のしまくとぅば朗読会を展開することができました。紙芝居制作のワークショップには、夏休み期間中の5日間で延べ50名の子どもたちが参加しました。絵のタッチをあえて統一せず、子どもたち一人一人の、多様な個性を活かした一冊の紙芝居として完成させました。完成した紙芝居を配布したほか、糸満市場いとま〜るで実施したパネル掲示式には、約100名が来場しました。特筆すべきはデジタルを活用した点で、二次元コードを通じて若年層が苦手と感じている「しまくとぅば」の音声解説を提供し、世代間の文化障壁を低減させた点です。 本活動をとおして、当初は消極的だった子どもたちが堂々と朗読を行うなど、著しい成長を遂げました。今後もアニメやゲーム等、新たな媒体での展開を見据え、子どもたちが地域の未来の主役となる活動を継続していきたいです。


○2.24音楽祭実行委員会 団体(2年目)/WEBサイト
〈沖縄・アジア平和音楽祭2026 ~文化交流を通じた国際共生を目指して~〉
本事業は、2019年の沖縄県民投票を起点に、音楽を通じて平和と自治のあり方を問う継続的な取り組みです。「平和あっての表現ではなく、表現から平和を創る」という能動的な目的を掲げ、対象を東アジア、特に朝鮮半島へと広げて実施しました。2年目の支援を受けた今年度の主な活動としては、国内外のアーティスト約30組が参加する音楽祭、現場を体感するツアー、若者と表現者の対話交流の3点を軸に展開。韓国からの招聘ゲストを含む多様なジャンルの表現者が集い、延べ約4,000人の来場者を記録しました。「自分のことは自分で決める」というコンセプトのもと、音楽と会話を通じて現状と未来を思考するオープンな場を創出。昨年度の課題を反映し、次世代との実践的な交流を深化させた点は大きな成果だと感じています。今後は、本年度の知見を活かし、アジア諸国とのさらなるネットワーク構築と、平和を形づくる持続的な文化活動をめざしてまいります。
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○SOUVENIR 宮城いつか 個人事業主/Instagram
〈映画でひらく、語り場 in 東村〉
本プロジェクトは映画館のない東村(人口1600名余り)において、映画の上映会とTeach-in(トークセッション)を定期的に開催することで、地域住民が多様な価値観や社会テーマに触れて対話を深める機会を創出することを目的としています。本事業の核は、鑑賞後に監督や参加者が語り合う「Teach-in」にあります。映画館のない地域で深い交流と理解の場を創出することが狙いです。今年度は「ファニーズ」、「ちむぐりさ 菜の花の沖縄日記」、「AINU PURI」の3作品を上映。村内在住の住民を司会に起用したり、地元食堂によるお弁当販売、17年前の村の交流史を紐解くパネルの展示など、地域の人的・歴史的資源を編み直す運営を心がけました。上映会には延べ169名の方に来場いただきました。今年度の取り組みの内容は記録冊子としてまとめ、本活動を可視化する仕組みも整えることができました。大きな課題は予算面。継続を希望する村民からの声も多数あるので、今後は「上映会といえば東村」というブランディングを確立し、年1回以上の継続開催をめざします。映画を媒介に、立場を超えて記憶や感情を共有する試みを、地域コミュニティの新たな基盤として確立していきたいと思います。
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○With Art うらそえを考える会 スタートアップ(3年目)/Facebook
〈ステップアップ!With Art うらそえⅡ〉
With Art うらそえを考える会は、支援をいただき早いもので3年目。今年度も浦添市美術館と連携し、集中的な活動を展開しました。浦添市制50周年、浦添市美術館開館35周年の節目に合わせ、8月には写真家・平敷兼七氏と画家・井上淳三氏による二人展を開催。対照的な手法で庶民の姿を映し出した展示は、市長をはじめ多くの市民から高く評価されました。本展では入場料収入として約25万円を確保し、補助金に頼り切らない自走可能な運営モデルの確信を得ることができました。また、美術館前のスペースを活用した「Artマルシェ」では、美術館の建築美、美術、音楽、食が融合した良質な空間を創出。出店者・来場者双方の満足度向上につながりました。今後は既存団体との連携の在り方を模索しつつ、企画展をはじめとする継続的な事業展開を通じて、地域に根ざした活動を推進していきたいと思います。
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執筆:具志堅 梢
写真:照屋 寛佳
構成:沖縄アーツカウンシル