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2020.11.25 Wed

支援事業紹介:川平村の祭事を支える古謡等の保存と地域文化の継承に 向けた環境整備事業(川平公民館)

古謡伝承のための環境づくり

石垣市のなかでもとりわけ古い歴史を持つ川平村では、現在でも公民館が中心となって今も年間26 もの行事が執り行われている。しかし、近年では高齢化の影響によって、祭事に欠かせない歌をかつては全員が歌えた状況から、現在では一部の高齢者のみが、ほそぼそと歌う状況へと変化してしまっている。村内には 4 つの御嶽(オン)があり、昔からの住民はそのいずれかに所属する。

公民館の加入者は 300 名余りいるが、御嶽ごとに行われる祭祀の歌については、5、6 名が口ずさめるほどである。「ユンタ」「ジラバ」「アヨウ」とよばれる古謡は、長らく「暮らしの中で自然と身についていくもの」、と考えられていたが、現代社会では伝承は難しいことが明らかになってきた。そこで本事業では、カセットテープに残されている歌をデジタルデータ化し、計画的に練習の機会を設けることで、伝承の環境を整えることに取り組む。

地域誌を通して、伝統文化の理解を深める

昭和 51(1976)年に出版された『川平村の歴史』について、沖縄県立芸術大学名誉教授である波照間永吉氏らとともに編集委員会を結成し、改編を行う。先人が村の歴史や祭事、行事、慣習についてまとめたものだが、短期間で作成されたこともあり、誤字脱字や不正確な川平方言の記述がみられる。

本誌の修正と再構成を行うことで、現在の地域住民が活用できる本にすることを目的としている。これまで川平村では、御嶽及び公民館に所属している地域住民のみで年間行事を引き継いできたが、本土からの移住者が増え続けている地域でもあり、行事の継承については、新しい住民と向き合わざるを得ない状況にある。村誌の改編とその出版が、住民が地域を知り、議論を深めるための一助になることを期待する。

『川平村の歴史』編集委員会のようす

担当プログラムオフィサーのコメント

棒術や獅子舞とは異なり、素朴な古謡は地域の皆さんの関心をひくのが難しい伝統文化です。行事の直前には関係者が集中的に練習を行うものの、それ以外の期間に練習会を開いて多くの人へ継承していくというスタイルを作り上げていくのは、想像以上に時間がかかりそうです。

村誌の改編は、編集委員会に携わった地域の方々、県立芸大の先生方の尽力があり、スピード感をもって進みました。先人が製作した本から大きく改編した点としては、川平方言の表記を統一した点です。かつては誰もが声に出していた言葉も、現在は暮らしの中で使われる頻度がとても少なくなっています。若い世代が受け継いでいくためには、正確に表記する必要があったのです。