
【公演レポート】8月17日「第4回 高校生選抜かりゆし芸能公演」
ライター:たまきまさみ

夏の風物詩になりつつある「高校生選抜かりゆし芸能公演」も今年で4年目。開催された8月17日は、甲子園で沖縄尚学が仙台育英と対戦してベスト8入りを決めた日でもあり、沖縄の高校生たちが県内外で頑張っている姿を目に焼きつけることができた1日になりました。本公演にさきがけて「第13回沖縄県高校生郷土芸能ソロコンテスト」が5月31日と6月1日に行われ、三線・舞踊部門で金賞を受賞した16人のみなさんが、県立芸術大学の先輩たちとひとつの公演を作り、ともに舞台に立ちました。出演した高校生のみなさんの演舞や演奏する姿を中心に、レポートをお届けします。
満席となった会場は、開演を待ち侘びるお客さんでなんだかそわそわしていて、幕が上がるのを待っている時間も含めてひとつの公演なんだなと感じる瞬間でもあります。そんななか、芸大生の舞踊による「かぎやで風」で今年の高校生選抜も幕が上がりました。地謡の歌三線の中には、受賞者の高校生のみなさんが緊張した面持ちで並び、この日をどんな気持ちで迎えたのだろうと思いながら、ひとりひとりの表情を眺めました。続く斉唱の「ごえん節」「辺野喜節」と座開きにふさわしい演目が続き、改めて芸を磨きこの日を迎えたみなさんの姿に、背筋が伸びる思いになりました。芸大生の先輩たちと心をひとつにして重ねた歌声が、満員の会場に響き渡っていました。
舞踊の演目は、品良く凛とした踊りを見せた當山紗良さんの「笠踊り」。「踊っている時が一番楽しい。やっぱり踊りが好きだなと思う瞬間があるから続けてこられた」というインタビュー中の言葉も記憶に残っており、潔さも感じられる舞姿に芯の強さも感じました。続く「かせかけ」の﨑原裕絢さんは、瑞々しくもしとやかに柔らかに踊る姿が恋する娘の初々しさを表現するという演目の意図と重なるのを感じながら、﨑原さんがこれから年を重ねるなかで、この演目を踊った時の変化も見てみたいと思いました。
第1部の締めくくりは、独唱三題。當眞愛乃さん、比嘉一朴さん、外間凪琉さんそれぞれが、これから将来に向けての選択の中で、三線でこの舞台に立つことはないかもしれないと話していたことが印象的だったこともあり、見ているこちらも自然と最初で最後に聴ける独唱かもしれないという思いで、心して聴き入りました。當眞さんの「百名節」は、哀愁漂う温かな高音が心地よく、情緒的なメロディーを切々と歌い上げ、深く心に染み入りました。続く比嘉さんによる女性のやるせない心情を歌った「花風節」。感情を乗せすぎず、抑制された表現にも感じられたこともあり、歌に込められた別れの悲しみや切なさがよりまっすぐこちらに届いた感覚になりました。ラストを飾ったのは外間さんの「赤田花風節」で、人間の成長過程を紡いだ歌を情け深い歌声でしみじみと聴かせました。三者三様の思いがあったであろう独唱、1部の締めくくりとしてすばらしかったです。

第2部は、舞踊の演目が5題。大城珠那さんの「瓦屋」は、歌三線がすべて女性ということも相まって、女心の切なさを丁寧に描き表現していました。一人舞のラストを飾るのは、石垣正城さんの「ぜい」。勇ましさと凛々しさを感じさせるはつらつとした舞で、高校生選抜最後の演目を踊り納めました。
芸大生とともに飾るフィナーレは、第2回高校生選抜から登場した演目である創作舞踊「走りよー舟小」。年々少しずつ演出が変わっていて見るたびに雰囲気や印象が変わる演目です。村の若者たちが船出する姿を躍動感あふれる音曲と踊りで、華々しく表現しています。今回は高校生出演者がわかるように登場する場面や衣装などが工夫されていて、出演者が多数いる中で探しやすかったです。芸大生もともに盛り上げながら、瑞々しい後輩たちからどのような刺激を受けたのかも気になりました。9人が弾く三線の音の厚みも迫力があり、客席からも自然に手拍子が湧き上がり、高校生たちの旅立ちをみな一体となって祝ったような感覚がありました。
今年は休憩時間には、昨年から作成・販売を行うようになったパンフレットを手に出演者を探して喜んでいる家族や関係者の姿や、第1部の「上り口説」第2部の「下り口説」の歌三線に合わせて歌い出す高齢女性がいらっしゃったりと、客席もにぎやかなのも印象に残りました。そういう情景も含めて、ひとつの舞台なんだなとも感じる瞬間でした。
今回が国立劇場おきなわの舞台に立つ最初で最後の公演かもしれないと話す出演者も数人いたこともあり、その言葉をいつもよりも意識しながら公演を見ていたように思います。また来年の高校生選抜はどんな公演になるのか。そして、今年舞台に立ったみなさんがどんなこれからを歩むのか、そんな希望と期待が入り混じった気持ちになる「第4回高校生選抜かりゆし芸能公演」でした。


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▶第4回高校生選抜 かりゆし芸能公演