【公演レポート&出演者インタビュー】8月27日「第2回 高校生選抜かりゆし芸能公演」
取材者及びライター:たまきまさみ
8月27日、国立劇場おきなわにて「第2回高校生選抜かりゆし芸能公演」が開かれました。6月に行われた「第11回沖縄県高校生郷土芸能ソロコンテスト」の金賞受賞者たちが、県立芸術大学(以後芸大と表記)に在学する先輩方や若手実演家として活躍するみなさんと晴れ舞台に臨みました。約2時間にわたる公演の鑑賞レポートをお届けします。
第一部は「かぎやで風」で幕開け。芸大生の先輩方や若手実演家のみなさんとともに、歌三線には今回の金賞受賞者8人の姿がありました。お祝いの席で歌われることが多いといわれる演目が並ぶなか、厳かな空気を漂わせながらも瑞々しさも感じられる歌声が耳に残ります。斉唱「恩納節」「ごえん節」では、自然やその情景、人の縁について歌われる歌詞に思いを寄せながら聴き入りました。
舞踊の演目では「加那よー」を踊った倉掛夢菜さんの所作が柔らかくて美しく、可憐な乙女心を軽やかに表現していたのが印象的でした。琉球古典音楽独唱では高文連会長賞の古堅樹音さんが「白鳥節」を三線と歌声だけというプレッシャーを想像させながらも、堂々とした風格を纏って凛とした歌声を響かせました。
第一部の舞踊では島袋由妃さんが「揚作田」、新垣愛さんが「かせかけ」とそれぞれ一人踊りを舞い、「谷茶前」では芸大生のみなさんが場を盛り上げました。独唱は伊江里菜子さんが「干瀬節」、大保舞紗さんは「子持節」と包み込むようなしっとりとした歌声を聴かせ、客席もしみじみと聴き入っているのを感じました。
福原佑一朗さんの勇ましい演舞による「湊くり節」で第二部はスタート。山口知紗さんの「瓦屋」、花木奏さんの「下り口説」、具志堅未侑さんの「汀間当」、上間凰世さんの「ゼイ」では、これまでのお稽古や受賞に至るまで積み重ねたものや、歌詞の世界を表現しようとしている様子が垣間見える踊りでした。
「秋の踊り」では芸大生の舞踊に合わせて、歌三線で金城晴さん、新城あかりさん、宮城葵さん、比嘉乃愛さんが先輩方と歌声を重ねました。最後の創作舞踊「走りよー舟小」では、舞踊に全出演者が登場。若手実演家と芸大生6人による勇壮な歌声と三線の軽やかな演奏に乗せて、高校生たちの新たな旅立ちを祝い背中を押しながらも、琉球芸能をこれからも共につないでいこうという気概が感じられるような演目で、みなさんの笑顔や心から楽しんで踊る姿に合わせて客席から手拍子が響き渡り、熱気が満ちるなか幕を下ろしました。
公演を終えて舞踊部門の上間凰世さんは、
「今回のソロコンテストで高文連会長賞に選ばれて私でいいのかなという思いや、本番の『ゼイ』は一人踊りの演目の最後だったこともあって、期待に応えられる踊りができるのかなど不安要素がたくさんありました。ですが、周りの方々への感謝の思いが一番の支えになったことや、思っていた以上にたくさんの方が見に来てくれたので、緊張しながらも踊りきることができました!また、芸大生とのコラボ演目の『走りよー舟小』は、聞いても踊っても楽しい演目になっていて、とても楽しく踊ることができました」
と舞台に立った喜びを語ってくれました。
三線部門の伊江里菜子さんは、
「今回、初めて独唱という貴重な経験をさせていただき感謝の気持ちでいっぱいです。お稽古では、同じ高校生が一生懸命琉球芸能に向き合っている姿を見て刺激をもらいました。本番はとても緊張してしまい、反省点もたくさんありますが、次のステップに向けて精進していきたいと改めて思うことができました。また、今回の公演では芸大生や若手実演家のみなさんと同じ演目に出演させていただき、とてもうれしかったです。今後もさらにお稽古に励み、先輩方に追いつけるように頑張りたいです」
とこの経験を糧にさらに前進していくことを誓いました。
独唱のトリを飾った古堅樹音さんは、
「かりゆし芸能公演に出演して、学んだことがたくさんありました。公演までの稽古では、緊張しすぎて普段通りの演奏ができなかった時に、実演家の先生方がその都度丁寧に分かりやすくアドバイスをいただいて、リラックスしてお稽古ができました。本番も芸大の先輩方や先生方が声をかけてくださったこともあって、自分のペースで集中して歌うことができました。また、実演家の方々や芸大の先輩方の三線の弾き方や口の開け方、形などとても勉強になりました」
と先輩方や先生方から見て学んだ技術について振り返っています。
昨年の第1回公演よりも、心なしか出演者のみなさんが緊張しながらも楽しんで表現しようとしている様子が伝わり、客席で見守っているみなさんと一緒にリラックスして鑑賞することができました。目や耳、体を通して琉球芸能や沖縄の伝統を学びながらつないでいる高校生のみなさんにとって「沖縄県高校生郷土芸能ソロコンテスト」や昨年から始まった「高校生選抜かりゆし芸能公演」という演舞や演奏を見てもらう機会がどれだけ大きなもので目標となっているものなのか、今回公演前の出演者のみなさんへのインタビューや公演を通して改めて感じることができました。
最後にこれからの目標も聞かせてもらいました。
上間さん:「今後はこの舞台でのたくさんの学びを持ち帰り、郷土芸能部や所属する流派の稽古場でも発揮できるように頑張りたいです。進路希望としては、芸大の琉球舞踊コースに進学したいと思ってます。今回の公演に先輩方と一緒に出演させていただき、琉球舞踊を踊る楽しさや伝統文化をつなぐ大切さなど、色々なことを学びました。私は踊りだけではなく三線も習っているので、踊り、三線とそれぞれの先輩方から見習うことがあったので大変充実した舞台になり、この機会に学んだことを今後生かしていけるように日々精進していきたいです」
伊江さん:「今回の公演を通して課題を見つけることができたので、日々お稽古を重ねて改善し、さらに技術を磨けるように努力したいと思いました。そして今回の公演で共演できた高校生、芸大生、若手実演家のみなさんとまた一緒に舞台に立てるように頑張りたいと思います。今後もたくさんの経験を積みながら、自分と向き合っていきたいです。私たち高校生だけでなく、さらに下の世代にも琉球芸能の魅力を伝える活動ができたらいいなと思っています」
古堅さん:「今後はかりゆし芸能公演での経験を生かして、日頃の稽古や舞台に立って気づいた苦手な部分を意識しながら様々な舞台に立ちたいです。そしてこの経験を後輩達にも伝えていきたいと思います。かりゆし芸能公演までの短い時間ではありましたが、今回の経験を機に古典音楽、琉球の歴史についてもっと深く知りたいと思いました。これから実力も伸ばしながら、歴史や背景なども勉強していきたいです」
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それぞれが公演を通して自身を見つめ、これからも琉球芸能を通して学びを深めながら後進につないでいく思いを新たにする言葉を聞かせてくれました。
公演は終わりましたが、高校生のみなさんはそれぞれの稽古場に戻り、技術の研鑽や伝統を未来につなぐため、稽古を重ねる日々は続いていきます。幼い頃から琉球伝統芸能の一端を担うみなさんが目標とする場の一つとして、「高校生選抜かりゆし芸能公演」がこれからも回を重ねて続いていくことを願います。
上間凰世(うえま こうせい)
沖縄県立南風原高等学校3年。
第11回沖縄県高校生郷土芸能ソロコンテスト 舞踊部門、高文連会長賞。
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伊江里菜子(いえ りなこ)
沖縄県立首里高等学校2年。
第11回沖縄県高校生郷土芸能ソロコンテスト 三線部門、県立芸大学長賞。
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古堅樹音(ふるげん じゅね)
沖縄県立南風原高等学校3年。
第11回沖縄県高校生郷土芸能ソロコンテスト 三線部門、高文連会長賞。
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▶第2回高校生選抜 かりゆし芸能公演