特集記事 | かりゆし芸能公演
2023.08.09 特集

【公演前インタビュー】8月27日「第2回 高校生選抜かりゆし芸能公演」

取材日:7月17日(月・祝)
取材者及びライター:たまきまさみ

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 6月3、4日に行われた「第11回高校生郷土芸能ソロコンテスト(以後ソロコンと表記)」では、舞踊部門と三線部門に総勢55名の高校生が出場しました。ソロコンとは、琉球芸能に携わる高校生にとって甲子園のようなコンテストで、上位入賞を果たすと、8月に開催される「第2回高校生選抜かりゆし芸能公演(以後高校生選抜と表記)」に出演することができます。
 今回は、高校生選抜への出演が決定したみなさんに、熱い戦いをくり広げたソロコンや高校生選抜への意気込み、それぞれの琉球芸能の歩みなど、お話を伺いました。高校生たちの言葉の端々に感じるみずみずしさや、まっすぐな思いにこちらも元気をもらいました。来月の公演よりひと足早く、みなさんの表情と声をお届けします。



- 今年の高校生郷土芸能ソロコンテストを振り返ってどうでしたか?

新垣愛さん(以後新垣さん):ソロコンは課題曲が「かぎやで風」のみなので、様々な会派や色々な人の「かぎやで風」を見られる楽しさがありますし、勉強にもなりました。初めての出場だったのですごく緊張していたんですけど、「おおっ‼」「うしっ」と気合いを入れて頑張りました(笑)やってやろうみたいな気持ちですね。緊張しすぎて震えてしまったのが悔しいところではあったんですけど、私が今できる精一杯は出せたかなと思いました。

大保舞紗さん(以後大保さん):私は昨年のソロコンの後から色々な経験をさせてもらって、充実した一年を過ごせました。高校生伝統芸能分野海外就業体験事業(以後体験事業と表記)※1でハワイに行ったり、他流派の稽古に参加したり、色々な経験をして、すごく成長したなと思っています。
 今回ソロコンでは金賞と、2位に当たる「芸大学長賞(沖縄県立芸術大学〈以後芸大と表記〉学長賞)」を受賞したのですが、昨年は1位の「高文連会長賞」を取ったんですね。今年は、前日に沖縄タイムス社主催の伝統芸能選考会があったことや、昨年ソロコンで1位を取ったプレッシャーなど、色々重なってすごく緊張していました。結果は目指していた「高文連会長賞」を同じ学校の先輩が受賞して、とっても悔しい思いをしたんですけど、この悔しい思いも、これから色々な舞台に生かせるようにしたいと思っています。
 また、昨年は「かぎやで風」を暗譜することさえも初めてで、初々しい気持ちと勢いで賞を取ったというのが大きかったんです。今年は、この1年間の稽古や様々な舞台への出演などから経験を重ねた分、「かぎやで風」という演目に、より重みを感じるようになり、それを知った上で演奏をするということが、昨年から成長したところかなと感じました。

福原佑一郎さん(以後福原さん):私も大保さん同様、昨年のソロコン後、体験事業にも参加し、本当に色々ありました。昨年のソロコンで初めて同年代の人と関わり、みんなの実力を知った上での今年は、本当に昨年よりも気を引き締めないとという気持ちが強い舞台でした。
 ソロコンには、今年で3年連続で出演させてもらっているんですけど、1、2年の時は「金賞」で、そして今年は「金賞」と「芸大学長賞」という2つの賞を受賞させてもらいました。毎年参加してきて「芸大学長賞」を頂いたことは、とても達成感があり、3年通して頑張ってきた結果が報われたのかなという思いが強いです。そして、こうやって同年代の方々と一緒に舞台をさせていただく機会があまりなかったので、高校生選抜で一緒に立てることはすごくうれしいなと思います。
 また、3年間を通しての気持ちの変化としては、高校2年生の時に琉球新報社主催の「琉球古典芸能コンクール」(以後コンクールと表記)の「優秀部門」の受験とソロコンの日程がかぶり、すごく緊張したんですけど、その状況の中で、ソロコンの金賞を受賞し「優秀部門」にも無事に合格することで、3年生になりより自信を持ってソロコンに取り組めたなという感じです。

※1...郷土芸能に励む高校生と引率教諭をハワイに派遣し、伝統芸能をいかした観光業の学びや就業体験、現地の高校生や県人会等の交流による海外とのネットワーク構築と、将来の伝統芸能を観光資源として更に発展させる人材育成を図ることを目的に、沖縄県が令和4年度から実施している派遣事業。
昨年度の事業に、今回出演する高校生の中から6名の皆さんが参加している(インタビューを行った新垣さん、大保さん、福原さんも参加)。

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- みなさんにとって、高校生郷土芸能ソロコンテストとはどういう存在ですか?

新垣さん:本当に個人的な意見ですが、ある種の力試しでもあるのかなと思います。実は、沖縄タイムス社主催の伝統芸能選考会(以後コンクールと表記)の「優秀賞」の課題曲とソロコンの課題曲は、同じ「かぎやで風」なのです。コンクール前にソロコンに出場することで「私はどれぐらいの位置にいるのだろう」「どのぐらいの技術が身についているのだろう」と確認ができるのではと考えて、ソロコンの出場を決めました。
 コンクールは結果が明確に見えるので、ソロコンに出ることで「私がどれぐらいできているのだろう」という力試しができるいい機会だと感じました。

大保さん:ソロコンとコンクールの違いは、コンクールは弾ききることが結構大事といいますか。「優秀賞」では「昔節」という10分ぐらいの曲を演奏するのですが、覚えるのがものすごく大変な曲で、コンクールではその曲を覚えて演奏しきることが目標でした。ソロコンは「かぎやで風」をどう表現するかという、「表現をする」という部分が大切なコンテストなのかなと思っています。

福原さん:ソロコンは課題曲が「かぎやで風」なので、舞踊の基本をどう表現できているのかという、基本を確認する場所みたいな感覚でした。私としては、そういうふうに認識していていましたし、同年代の方々と順位を競い合う、賞を取り合う場は今まで経験したことがなかったので、そういう競い合い、お互いの実力を向上し合う、切磋琢磨し合う、そういう競技的な面をすごく感じました。

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※第11回沖縄県高校生郷土芸能ソロコンテストの受賞者(左が三線部門、右が舞踊部門)



-「第2回高校生選抜かりゆし芸能公演」出演にあたり、どんな思いで稽古に臨みたいですか。

新垣さん:国立劇場おきなわの大きい舞台で、芸大生に地謡を演奏してもらえたり、一緒に舞台に立てたりと、私が今まで踏んできた舞台も気を引き締めて臨んできましたが、より一層気が引き締まる舞台だなと感じています。なので「かせかけ」の稽古には、真摯に向き合い励みたいと思っています。

大保さん:今年も昨年と同様に、国立劇場おきなわの舞台で独唱させてもらうことができるので、この独唱曲にちゃんと向き合って稽古も頑張りたいと思います。また同世代の他校の友達や先輩と稽古場で会えて、他の出演者の皆さんの演奏や踊りを見ることができるのもすごく楽しみにしています。楽しい気持ちで参加できたらいいなと思っています。

福原さん:今回、高校生選抜で一人踊りで「湊くり節」を演舞させてもらうのですが、やっぱりどんな演目が当たっても、初心を忘れることなくこれからの稽古に励んでいけたらと思っています。また、芸大生の方々と舞台をご一緒するのが初めてなので、私自身も舞踊や伝統芸能を楽しみながら稽古に励んでいきたいと思います。

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- 高校生選抜に出ることが決まり、先輩方と舞台に立つことや芸能に携わる上で心情の変化などはありますか。

新垣さん:今回の舞台が決まったからという理由だけではないのですが...。私は小学校から舞踊を始めたのですが、小学生からやってきたものが、どんどん成長しているなというふうに感じました。小学生から中学2年生までは、沖縄タイムス社主催の「こども芸能祭」に出るため、少しずつお稽古を重ねていくような感じでした。その後は、「新人賞」や「優秀賞」を受験するために、お稽古を重ね、そうしているうちに自分自身の芸が上達していくように感じました。
 舞踊を続けていく中で、周りの環境も少しずつ変わっていくような感じがしていて、今回のような芸大生と舞台を踏むのは私の中ではすごいことなので、着実に前に進んでるんだなと感じ、身が引き締まるような気持ちです。

大保さん:ソロコンで同じ年代の演奏や踊りを見て、同年代でこんなに芸能に向き合っている人がいっぱいいるんだな、ということをとても実感したので、私もみんなと一緒に頑張りたいですし、誰にも負けないような演奏をしたいなと思いました。

福原さん:芸大生の方々と関われることはすごくうれしいことですし、私も気を引き締めて一緒に取り組んでいきたいなと思いました。芸能を専門的に学んでいる先輩たちとご一緒させていただくので、先輩たちの姿から色々なことを学んでいきたいという気持ちで、今回の舞台を頑張っていきたいです。

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- 琉球芸能に携わるきっかけや、これまで続けてこられた理由などについてうかがえますか。

新垣さん:私がいま師事している先生のもとで、祖母が習っていたことがきっかけです。まず先に姉が始めて、その背中を見て私もやりたいなと思うようになりました。保育園の時から通っていたんですけど、しっかりと習い始めたのは小学1年生からになります。
 人前に出るのは緊張するし、稽古ばかりで嫌になることも時々はあるんですけど、舞台に出た後の達成感や、家族やおばあちゃんが見に来てくれて笑顔になっている姿を見ると「やっていてよかったな」と思います。そういう積み重ねが、続けられた理由なのかなと思います。

大保さん:小学1年生の頃に民謡教室に通い始めたことがきっかけで、そこで三線の楽しさを知りました。「もっと三線のことを知りたいな。上手になりたいな」という気持ちから古典を習い始めて、郷土文化コースと郷土芸能部がある南風原高校に進学しました。
 高校では、一緒に三線や芸能を頑張る友達や先輩がいて、「この曲楽しいよね」と共感してくれる友達が増えたことがすごく楽しくて、そういった友達の存在と一緒に頑張る仲間がいることが、これまで頑張ってこれた大きな理由かなと思います。

福原さん:私が琉球舞踊を始めたきっかけも、新垣さんと似たような感じです。祖母が琉球舞踊を習っていて、小さい頃から稽古場について行っていたので、ずっと琉球舞踊を見ていました。そのころから琉球舞踊の楽しさや素晴らしさに惹かれていたので、そのままの流れで道場に入門しました。年々、稽古を積み重ねるなかで、踊りの技能もですが、人間としてもだんだん成長していくのを感じて、その気づきが一番のモチベーションにつながったと思います。
 やっぱり稽古をしていると、本当に心が折れそうになる時とかもあるんですけど、今まで舞台で関わってきた先生方や様々な人たちとのつながりが、私と琉球舞踊をつなぎ止めていてくれたのかなと思います。つらい時も先生に励ましてもらったり、叱咤激励してもらったりして頑張ろうという気持ちになったので。尊敬する先生や目標にする方々がいるので、そういう気持ちが私をここまで連れてきたのかなと思っています。

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- 公演当日に向けての意気込みについてお聞かせください。

新垣さん:「かせかけ」はコンクールの課題曲だったのですが、その当時、コロナ禍で「芸能祭」※2が中止になり「かせかけ」を舞台で踊る機会がそれっきりだったのです。今回、2度目の「かせかけ」の舞台として、「新人賞」の時よりも少しは成長できたと思っているので、その頑張って成長した姿を表現できるように、楽しみつつ頑張っていきたいと思っています。

大保さん:先ほどもお話ししましたが、今年も国立劇場おきなわで独唱することができるので、私の歌が「今日の舞台で一番聞けてよかった」とか、「この舞台を見にきてよかった」と思ってもらえるような、心に残る演奏をしたいなと思っています。

福原さん:今まで私を支えてくださった先生や親に、ありがとうという感謝の気持ちを表現できる演舞ができたらいいなと思っています。また、私も含め見てくださる観客の方が楽しいと感じてくれるような舞台を、今回出演する皆さんと一緒に作っていきたいです。

※2 コンクールの受賞者が主演する公演。

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- これから目指していることや目標について教えてもらえますか。

新垣さん:まず、近い目標で言うと、来年もソロコンに出たいなと思っています。大きな目標は、コンクールで「最高賞」を受賞するぐらいの実力になって、稽古で芸をもっともっと磨いて先生方に近づいていけたらなと思います。大人になっても琉球舞踊を続けていけたらなと思います。

大保さん:明確な目標としては、来年もまたソロコンに出場して、次こそは「高文連会長賞」を取れたらいいなと思っています。これからも三線と向き合って継続していきたいなと思っていますし、続けるだけではなく様々な舞台にでて、私の演奏を見て「やっぱり三線って楽しいんだな」とか、「沖縄の音楽って文化ってすごいんだな」ということをもっと広めたいという気持ちもあります。

福原さん:将来的には大学進学後、国立劇場おきなわの組踊研修生として勉強し、踊りだけではなく組踊なども含めて多方面に活動を展開できたらいいなと思っています。個人的には、沖縄の文化だけではなく、日本の文化もとても好きなので、沖縄と日本、両方を学んで、それぞれの良さを発信する活動ができたらいいなと思っています。

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 昨年から始まった「高校生選抜かりゆし芸能公演」。主催の沖縄県文化振興会の担当職員の方々も、今回のソロコンで高校生のみなさんが舞台へ懸ける表情や、前年出場のメンバーのドラマを間近で垣間見て、ソロコンの意義や若手の育成について感じることも多かったそうです。
 中学2年まで出場できる沖縄タイムス社主催の「こども芸能祭」、琉球新報社主催の「若衆芸術祭」、沖縄県高校生郷土芸能ソロコンテスト実行委員会・沖縄県高等学校文化連盟主催の「沖縄県高校生郷土芸能ソロコンテスト」、そして、ソロコン上位入賞者の高校生が沖縄県立芸術大学の学生とともに出場できる「高校生選抜かりゆし芸能公演」。次代を担う若手のみなさんが琉球芸能を継承するにあたって、芸を披露する場としての目標となるこの流れとこれからに期待を込めて、今年も「高校生選抜かりゆし芸能公演」を開催します。多くのみなさまのご来場をお待ちしております。

プロフィール

prof_01.jpg新垣愛(あらかき あい)
沖縄県立首里高等学校2年。
第11回沖縄県高校生郷土芸能ソロコンテスト 舞踊部門、県立芸大学長賞。
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prof_02.jpg大保舞紗(おおほ まいしゃ)
沖縄県立南風原高等学校2年。
第11回沖縄県高校生郷土芸能ソロコンテスト 三線部門、県立芸大学長賞。
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prof_03.jpg福原佑一郎(ふくはら ゆういちろう)
沖縄県立向陽高等学校3年。
第11回沖縄県高校生郷土芸能ソロコンテスト 舞踊部門、県立芸大学長賞。
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