2024.12.24 Tue
これからの時代の文化芸術の担い手を発掘、育成することを目的として、2023年度より開始した「オキナワ担い手未来」。今年度は、対象を八重山地域にも広げ実施しました。
2024年11月23日(土)-11月24日に初開催された「オキナワ担い手未来 in 石垣」。2日間の集中講座には、世代も職種も出身も多種多様な面々が参加しました。 個性あふれる講師陣と、文化芸術の課題解決を考え、新たな視点を創造する絶好の機会となりました。
各CHAPTERの様子を、〈前半〉〈後半〉に分けてレポートでお届けします。
>>Report〈前半〉はこちら
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CHAPTER.4
新たな目線で街を見つめる(フィールドワーク)|講師:石川 竜一(写真家)
日時:2024年11月24日(日)13:00~16:30
場所: まちなか交流館ゆんたく家
前日から続く左脳的な活動から一変し、「自分の感覚をたよりにする」という挑戦的な課題を参加者に持ちかけたのは、CHAPTER.4の講師、沖縄の写真家、石川竜一氏です。「嫌がらせ」と茶目っ気たっぷりに出した課題は、石垣島の街中を歩きながら「自分にとって価値のあるものを見つける」体験型の内容です。お金の使用はなし。そうして集めたものを発表し、お互いに交換し合うという流れです。
さて、思い思いの一時間を探求し帰ってきた参加者の手には、様々なるモノが…。
裏庭で摘んできたハーブ。袋に入った数々のゴミ!?売り物か?と思うようなビールジョッキとチラシの束、片方だけのぞうり、割れたテキーラグラスとタバコ!などなど…。
自分の中にある「拾えるものと拾えないもの」の境界線を探りながら、集めたものをコラージュした参加者や、コロナ後の観光地の今を、解体現場から拾った落とし物で表現した「ISHIGAKI MADNESS 2024」など、参加者それぞれの気づきが作品に投影され、石垣の街が新しい視点で語りなおされているようでした。
「言葉で説明できなくても、それでいい」という石川氏の言葉は、アートが心と心を結ぶ媒介であることを気づかせてくれます。自由な発想と、感覚の交差を体験した貴重な時間が終わり、最後に講師の署名入り「作品証明書」も発行されました。六名のアーティストの誕生です!
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CHAPTER.5
地域に根ざした文化・芸術活動の可能性(報告会及び振り返りディスカッション)|講師:石川 竜一、武田 力
日時:2024年11月24日(日)17:00~18:00
場所: まちなか交流館ゆんたく家
二日間にわたる講座を通して、文化や芸術がもたらす多様な価値が深く探求されました。その締めくくりとして行われた座談会では、参加者と講師陣が自由な意見を交わし、地域での文化活動やアートプロジェクトの可能性について語り合いました。
参加者の一人は、行政主導の「アーティスト・イン・レジデンス事業」を提案。これに対し、八巻氏は、地元の文化部署をリサーチすることを指摘。また、予算が限られた小規模な「マイクロレジデンス」に可能性があることを提案しました。その時に大事なのは、「周りをうまく巻き込むこと」だと語り、ジャンルの垣根を超えた取り組みの必要性を示唆しました。
武田氏は、外部者が地域の内部に入り活動を展開する際には、橋渡し役の存在が円滑な運営に欠かせないと述べ、小規模でも持続可能な仕組み作りの必要性を訴えました。また、アーティストが創作の自由を制約される事例をあげたのは、写真家の石川氏です。過去に扱ったテーマを再展示するだけの依頼では、新たな表現への挑戦が制限される可能性があるため、柔軟なプロジェクト設計の大切さを強調しました。
最後に語られたのは、「利用し合う関係性をつくる」という意識をもつことでした。参加者、地域住民、アーティスト、それぞれが互いを知り、協力し合うことで、文化活動の可能性は広がり、そこに新たな循環が生まれていきます。「我々は、ニッチな存在です」。講師が残した言葉に、新たな展開を予感させる貴重な二日間でした。
執筆:飯田あかね