2024.12.24 Tue
これからの時代の文化芸術の担い手を発掘、育成することを目的として、2023年度より開始した「オキナワ担い手未来」。今年度は、対象を八重山地域にも広げ実施しました。
2024年11月23日(土)-11月24日に初開催された「オキナワ担い手未来 in 石垣」。2日間の集中講座には、世代も職種も出身も多種多様な面々が参加しました。 個性あふれる講師陣と、文化芸術の課題解決を考え、新たな視点を創造する絶好の機会となりました。
各CHAPTERの様子を、〈前半〉〈後半〉に分けてレポートでお届けします。
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CHAPTER.1
文化芸術の価値とは何か|講師:中村 美亜(九州大学大学院芸術工学研究院教授)
日時:2024年11月23日(土)13:00~15:30
場所: まちなか交流館ゆんたく家
CHAPTER.1は、九州大学で文化政策・アートマネジメントの教鞭を執る中村美亜氏より、「芸術や文化は私たちにとってどんな変化をもたらすのか?」との問いかけから始まりました。これまでは、お金や入場者数といった定量的な価値が強調されがちだった文化・芸術の力を、違った視点で言語化するにはどのような方法があるのか? 参加者たちも議論に加わり、自身の経験や考えを共有しました。
文化や芸術はジャンルに縛られるものではなく、私たちの生き方、人とのつながりなど、社会的な価値を共有し深めていく過程に、見えない価値が存在します。 文化を育む「土壌」の豊かさが、そこに根を張る芸術を支え、その成果が再び文化の土壌を肥やします。この循環をどのように作っていくのかが問われました。
効率や便利さに偏りがちな現代社会において、文化芸術の価値は、私たちに振り返りの場を与え、共感を育み、新たな行動や変化を生み出す力を持っています。わくわくする場が小さな波紋を作り、やがて社会全体に影響を及ぼす。この力こそ、社会全体に豊かさをもたらす原動力となることを確認し、CHAPTER.1が終了しました。
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CHAPTER.2
アートプロジェクトのディレクションと運営|講師:八巻 真哉(アートディレクター/キュレーター)
日時:2024年11月23日(土)16:00~17:30
場所: まちなか交流館ゆんたく家
CHAPTER.2では、沖縄アーツカウンシルでプロジェクト支援に携わる、八巻真哉氏が「アートプロジェクトのディレクションと運営」を題材に、実践的な知見を語りました。
冒頭、「現代アートとは何か」との問いに、参加者は一瞬とまどいます。 現代アートは、固定概念を超え、社会批判や新しい価値観の創造に寄与する自由な表現です。日本では、「難解さ」や「アートは感じたままでよい」といった偏った見方が定着し、作品の背景や、意図を理解する試みが不足している現状が指摘されました。こうした現代アートを紐解く力が、新しいプロジェクトを生む重要な土台だと示唆されました。
続いて、講師の京都府での文化事業の経験を元に、予算獲得、行政へのアプローチ方法、地域の特性をリサーチする重要性が説かれました。住民の声を丁寧に反映したプロジェクト提案が、主体的な参画を促し、信頼関係の構築に役立ちます。また、アーティストが地域住民と交流しながら創作活動を行う事業を参加者自ら提案していく場面では、「アーティスト・イン・エアポート」や、「アーティスト・イン・イシガキ」など、様々な設定に応じた提案があがりました。
「青い海、青い空」だけではない多面的な石垣島の魅力を発信していくために、文化・芸術にできることは何か? 既成概念を揺さぶり、新しい視点をもたらすために、どのようなプロジェクトを創造していくのか? 参加者一人一人が未来に思いを巡らせました。
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CHAPTER.3
思いをオファーしてみる|講師:武田 力(演出家/民俗芸能アーカイバー)
日時:2024年11月24日(日)10:00~12:00
場所: まちなか交流館ゆんたく家
「えー皆さん、元気ですか?」
ひょうひょうとした語り口から、2日目がスタートしました。演出家・民俗芸能アーカイバーとして、社会の課題を独特な視点で見つめ、表現活動を行う武田力氏。会場も和やかな雰囲気です。
講座の前半は、これまでの彼の活動が紹介されました。子供の頃に親しんだ教科書から、その時代の国家の意図や教育の在り方を発見する「教科書カフェ」。「たこ焼き」という日本固有の文化を通し、戦争の記憶や貧困問題をフィリピンのスラム街で共有する試み。警察署に「道路交通許可」の定義を問い、参加者と共にパフォーマンスに挑む作品など、どれもユニークな作品で、会場は盛り上がりました。
また、滋賀県杼木古屋(くつきふるや)という過疎集落の六斎念仏(ろくさいねんぶつ)との出会いから、民俗芸能を継承する難しさを真摯に語ります。 「土地との深い結びつきが、型をつくる。型だけで継承とよべるのか?」会場からも、地元が直面する文化活動の継承問題に、様々な意見が飛び交い、白熱した議論に展開しました。
後半は、石垣島の社会課題を題材に、演劇的なアプローチで、参加者自らアイデアを提案する時間です。参加者と講師とのかけあいから「問い」を引き出し、話が展開していきます。難しい課題も、ひとつの表現としてとらえると、もっと自由に考えられるのではないか? 遊び心や創造性が結びつくことで、隠れた問いを共有する場を参加者一同楽しみました。
執筆:飯田あかね
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