2021.04.13 Tue
「平和と鎮魂」を考える国際芸術祭の開催
戦後70年の節目に立ち上がった「すでぃる‐Regeneration₋プロジェクト」が今年度、「沖縄アジア国際平和芸術祭2020」として新たな門出を迎えた。過去2年、本補助事業を受けて済州(韓国)や台湾のアーティストとの連携を模索し続けながらも、言葉の壁や意思疎通の難しさを乗り越えて、ようやく沖縄での国際展の実現にごぎつけた。しかしながら、毎年6月23日の慰霊の日に合わせ摩文仁の地で開催してきた展覧会「マブニ・ピースプロジェクト」を12月に延期したほか、会場の変更や海外作家の渡航の見送り、トークイベントのオンライン化など、新型コロナウイルス感染症に奔走された芸術祭でもあった。
今回、済州や台湾アーティストを沖縄に迎えたことで、「平和と鎮魂」という言葉の持つ意味合いが、それぞれの地域の来歴によって異なることが示されたのは意義深い。沖縄のアーティストの展示から多くの学びを得たことだろう。
アートを多義的に捉え直す試み
昨今の国際芸術祭では環境問題や人権運動、あるいは地政学や民俗学的研究のように一般的にアートとして見なされないようなアーカイブを展示することもある。本芸術祭でも同様に、「平和と鎮魂」をテーマにさまざまな要素を含むプログラムが提供された。米国公文書館等が所有する沖縄戦の記録フィルムを買い取る「1フィート運動」の上映会や、若いアーティストや大学生による「平和学シンポジウム」、戦後の伊江島での米軍による土地紛争の記録をテーマとする阿波根昌鴻写真展、関連企画の「コザ暴動」写真展、さあには祭祀を移した写真展や首里城の焼け落ちた瓦を使ったワークショップなどが催され、アートの多義性が発揮された芸術祭となった。
大浦湾ピースアートプロジェクト「平和を守る」まぶいぐみ瓦シーサーワークショップ
プログラムオフィサーのコメント
今年度が補助最終年度ということもあり、自己負担が増える中で事業規模もこれまでを大きく超えました。心配された事業資金でしたが、朝日新聞文化財団や花王芸術・科学財団をはじめ民間4者の助成に採択され、開催につながりました。また、琉球新報で連載されるなど、県内連携も生まれ大きな実績となりました。