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2023.09.12 Tue

【オキナワ担い手未来レポート】chapter.3 「地域芸能」から考える地域の未来

講師:呉屋淳子(沖縄県立芸術大学 准教授)
日時:2023年8月19日(土)14:00~17:00
場所: 沖縄県立図書館4階交流ルーム

 第3回のテーマは「『地域芸能』から考える地域の未来」。講師は沖縄県立芸術大学の呉屋淳子准教授(専門分野は文化人類学、民俗芸能研究)。
 呉屋氏は朝鮮半島や八重山諸島、宮城県南部地域の被災地などにおいて、地域で育まれた音楽や芸能の持続可能な継承のあり方を地域の人々や行政、学校関係者と共に考え・語り合い・学び合うためのプロジェクトを企画し、調査研究を行う。


 
 第1部は講義。近年、人文学の分野でも盛んに提唱されている “パブリック・ヒューマニティーズ”(※1)の状況について触れた上で、読谷村長浜自治会の住民と研究者とアーティストの3者で試みた「まーすけーいプロジェクト」や、3年間取り組んだ『地域芸能と歩む』プロジェクト(同大学准教授向井大策氏と共同)を紹介。「できる限り大学を離れ、人々と対話を重ねて研究を進め、成果はできる限り地域に返していく」と、地域と関わる姿勢や住民との向き合い方について語った。また『地域芸能と歩む』の3年目に製作した報告書は第56回造本装幀コンクール 日本印刷産業連合会会長賞を受賞しており、その高いデザイン性にも評価が集まっていることからも、「デザインの力」が地域にもたらすものがあるのではないかと提案。受講生の皆さんも納得の表情で頷いていた。

 第2部はディスカッション。受講生の面々も2回目とあって互いに信頼度が増した様子。自然な流れでディスカッションが始まった。上がった声としては、 「沖縄は青い海、青い空はもうやり尽くした」、「地域の繋がりの強さは反面、排他性ともなる。でもこの欠点さえも沖縄には欠かせない要素なんじゃないか」など、各々身体に引きつけて「地域と歩むには…」の問いに向き合った。

 講義を終えて。全受講生に感想を発表いただいた。

 瀬川辰彦さん(プロデューサー)アートがまだまだ地域のために活かせる部分があると、今日改めて強く感じた。


 出町考平さん(音楽家)「地域芸能と歩む」のポストカードは好きで集め歩いたし、プロモーションが上手いなぁと気になっていた。プロモーションの考え方について詳しく聞いてみたい

  

 以上受講生の声(一部抜粋)。

 呉屋氏から回答。「コンセプトや私達の想いを本当に細かく言語化して、相当時間をかけてデザイナーと対話した。結果、デザイナーが想いを受け取ってくれこのビジュアルにつながった」と、やはりここでも対話の重要性を説いた。


 
 講義を終えた呉屋氏から受講生へ。「想いを持続させることは結構大変です。でも、受講生のような方々がいるからこそ研究者もモチベーションを保てる側面がある。今日は短い時間でしたが、私も得るものが沢山あった。これこそ“Unlearning”。私自身、皆さんに学びほぐしてもらった」と謙虚に言葉を紡いだ。

 第4回は9月2日(土)。講師は紫牟田伸子さん(編集家/プロジェクトエディター)。テーマは「地域のコミュニケーションをデザインする」です。

執筆:具志堅 梢

(※1)パブリック・ヒューマニティーズ(Public Humanities)とは、学術研究を研究者や専門家だけではなく、アカデミズムの枠を超えて市民に公開し、共有していこうという考え 

【オキナワ担い手未来―アーツプロジェクトを実践する人たちを育てる―】
~これまでのレポート~

■chapter.1 文化芸術の価値とは何か 講師:中村美亜(九州大学大学院 芸術工学研究院教授)