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2025.12.17 Wed

Report〈後半〉: めぐるプロジェクト第3回目「島をめぐる」~水納島の風景から感じるもの~

>>Report〈前半〉はこちら

水納島を去る朝



翌朝、朝食をとった後は自由行動。
礼拝所先のビーチへ向かう途中、井戸の横にある溜め池が戦時中にアメリカ軍が島民のために作ったものだと知り、島の中にある“歴史の痕跡”をより強く意識した。

雨が降り始め、宿へ戻ると、いよいよ今回の旅の核心である振り返りのディスカッションが始まった。

ディスカッション ─ 「島をめぐる」で見たもの、感じたこと



参加者4人がテーブルで向き合い、水納島での体験を一つひとつ言葉にしていった。
その言葉の端々から、参加者それぞれが旅を通して何を感じたのかが浮かび上がった。

① 星空と自然 ─ “空に包まれる夜”

星の多さに戸惑うほどの夜空。
灯台の光、意外に明るい伊江島の街明かり、潮の匂い。
水納島で過ごして感じたことを語る場で、はじめに出たのは都会では見るべくもない星空の話だった。

 自分が球の中にいて、半球をまるごと見ているかのようだった。

と語ったのは、宮城さん。
港のコンクリートに寝転がれば視界がすべて星で満たされる衝撃は、すべての参加者が等しく感じたようだった。



一方で、暗闇の中では光も眩しくなる。
1日目の真夜中、夜ふかし組は湧川さんと一緒に屋上へ上った。そこからは、遠く離れた残波岬の灯台の光が、島で一番大きな建物である校舎を照らしているのが見える。水納島の明かりは、沖縄本島からどう見えるのだろうか。

 伊江島が明るかった。

と話したのは邊土名さん。
伊江島が都会とは誰も思うまいが、そう感じさせる静寂が水納島にはあった。

② 島の暮らし ─ “ゆるやかなつながり”への憧れ



島のパブリックスペースのような仲地さんの庭、他人の車を気軽に移動できる家族のような距離感。
特に、誰にでも庭を開放しふれあいを楽しんでいる仲地さんの過ごし方に、参加者たちは驚いていた。

 現実的な話、いろいろ満たされているんだなと。心の余裕があるからここまでできるんじゃないかな。
 私もできるかな?今の私はできないけど、将来こんな感じで少しでもできたらいいな、と思った。

と、安里さんは仲地さんの生き方に憧れを感じたようだった。

③ ヤシガニ ─ “命をいただく”という実感



生きたヤシガニが茹でられ、赤く変わる瞬間。
“食べ物になる過程”を目撃したことで、命への向き合い方をそれぞれが考えた。

青みがかった外殻が、茹でると赤くなる、生き物から食べ物に変わる瞬間。
少し前まで生きていたものをいただく体験は、希少なヤシガニということもあり、参加者たちの心に大きく刻まれたようだった。



子どもの頃は、ウサギや犬をさばいて食べていたという話も聞いた。

 食べられるものはなんでも食べてきた、というたくましい話をニコニコしながら喋っていて、面白かった。

とピンクさんは話していた。

④ 島の未来 ─ “変わる風景と、島が選んだ道”



リゾート開発の話は、参加者に最も大きな衝撃を与えた。
リゾートができるという情報そのものよりも、島の人も検討や選択を重ねた上で誘致したこと、デメリットもあれば、期待する側面もあることを知り、未来に舵を切る決断があったことを実感したようだ。

島の3分の1を開発するような大きなプロジェクトは、伝統的な景色を失う侵略のようなものにも思えるが、話を聞いてみると、ネガティブなことばかりではないと知った。

学校行事が島の一大行事でもあった水納島では、リゾートホテルが誘致されることで、人が増え、子どもが増え、学校が再び開校される可能性がある。



安里さんは、島の自然や静寂が切り崩されることを島民も反対しているに違いないと思っていたが、そればかりではないと知り、安堵したと振り返る。
邊土名さんは、島の原風景が損なわれてしまうという危惧は一方的な押し付けだったかもしれないと、自身の認識が変化したことを話した。

 ホテルができれば、ビーチ以外に行く人も増えるかもしれない。

 フェリーも増えるかも。

参加者の中からも、リゾートができることによるいい影響の予想が飛び出した。

島の文化を残していくためにも、リゾート開発にポジティブな影響を期待していると知り、参加者たちは島の選択に思いを馳せていた。

結びに



参加者たちは「島をめぐる」を通し、自然環境・生活文化・経済的変化といった、水納島を成立させる複数の要素に触れた。
特にリゾート開発を目前にした水納島では、表面的な価値判断では捉えきれない現実がある。短期間ながらも水納島の自然や人に触れ、近い未来について考えることのできた体験は、参加者にとって大きなことだっただろう。

このあとは、3つの「めぐるプロジェクト」を経て、各参加者が感じたものや得たもの、考えたことを自由なアウトプットで表現する発表会、“「 」をめぐる”へと進む。


執筆・写真:照屋 寛佳

めぐるプロジェクト レポート一覧

0|オリエンテーション
1|芸をめぐる
2|心をめぐる
3|島をめぐる〈前半〉
3|島をめぐる〈後半〉
4|「 」をめぐる(準備中)



【本ページに関するお問い合わせ】

公益財団法人沖縄県文化芸術振興会 沖縄アーツカウンシル
「めぐるプロジェクト」担当(喜舎場・具志・橋口)
TEL:098-987-0926 
E-mail:info-ninaite@okicul-pr.jp

主催:公益財団法人沖縄県文化芸術振興会 (沖縄県受託事業「令和7年度沖縄文化芸術の創造発信支援事業」)