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2025.12.17 Wed

Report〈前半〉: めぐるプロジェクト第3回目「島をめぐる」~水納島の風景から感じるもの~

めぐるプロジェクトでは、これまで「芸をめぐる」「心をめぐる」を通し、それぞれが創作活動を行う参加者が自分たちの思考をめぐらせてきた。

3回となる「島をめぐる」では、参加者4人が水納島に12日で滞在し、島の風景やそこに住む人々の言葉に触れ、各々が感じたことを語り合う。

実は水納島は、リゾートホテルの誘致が決まっており、島の約3分の1がリゾートの敷地となる。島の生活や今ある風景を目に収められるのは、参加者にとってこれが最初で最後かもしれない。そのようなタイミングでの訪問に、参加者たちは何を思うのか。

那覇から水納島へ ─ 旅のはじまりの静けさ

早朝、那覇市の沖縄産業支援センターに集合した邊土名さん、安里さん、ピンクさんの3人。
3回目ともなると慣れた仲だが、1泊2日の「答えのない旅」を前に、それぞれの期待や緊張が入り混じり、少し静かな空気が漂っていた。



バスに乗って渡久地港に着くと、宮城さんが合流。
昼食をとりながら、少しずつ空気がほぐれていく。
フェリーが動き出し、風を受け、水納島の影が近づくにつれて、参加者たちの表情は自然と明るくなり、声が増え、写真撮影を楽しんでいた。

島に着く ─ “観光地”の先にある暮らしへ



水納島に着くと、すぐに広がる透明なビーチ。
観光客向けのレンタルショップが並び、美しい海を楽しむ観光客で賑わうが、島の奥に進むと空気は静かになる。



今回宿泊する「コーラルリーフイン・ミンナ」にチェックインし、プロジェクトの趣旨と、自由に巡るための過ごし方を簡単に共有した。

 集団で動いてもいいし、ひとりで歩いてもいい。
 気になった場所で立ち止まり、誰かと話してみてもいい。

休校中の学校が語る“気配”



宿のすぐ近くにある休校中の小中学校を外から見学した。
生徒がいた頃は、先生たちも島に住み、運動会の日には島外からの観光客が集まったという。学校行事が島の一大イベントでもあった。
校庭に静かに伸びる草木は、喧騒が引いた後の“余韻”のようだった。





児童生徒がみな卒業したあと、また島に活気が戻ることを見据え、廃校ではなく休校にしたのだという。
これは夢物語だろうか。
この旅で、水納島の複雑な現状や未来を、参加者たちは知ることとなる。

仲地さんの家を訪ねる



水納島に移住し、島の変遷を知る仲地さんの家を訪れた。
仲地さんの家にはバルコニーと広い庭があり、参加者たちはテーブルでアイスコーヒーをいただきながら仲地さんの話に耳を傾けた。

体育教師、校長先生として子どもたちを教えていた仲地さんの話は参加者たちにとって興味深く、島での豊かな暮らしや、世界陸上を観に行った冒険談、妻との思い出をしたためた日記を読む姿は特に印象に残ったようだ。



邊土名さんは、水納島の近現代史を綴った『水納島再訪』を読みながらこの旅に臨んでおり、仲地さんが著者と語っていた“あの頃の島”の風景について質問した。
仲地さんは懐かしむように、そして楽しそうに、島のことについて話してくれた。

島を歩く



その後、参加者4人で島を歩き出した。
拝所で静かに手を合わせ、かつて生活を支えていた井戸を覗き込み、獣道のような細い道を抜けて、海へと向かった。



賑わいのある港近くのビーチとは違い、ここのビーチは静けさがある。
美しい海で思い思いに過ごしたあと、参加者たちはビーチをあとにした。

表紙の風景を探す邊土名さん

途中、邊土名さんはひとり別行動をとる。
『水納島再訪』の表紙写真と同じ構図を探すためだった。



仲地さんから教えてもらったヒントを頼りに、貯水タンクの位置を追い、学校の裏へ、ビーチの奥へ、波止場の先へ。
ようやく、本の表紙と同じ景色を見つけることができた。



ゆっくりとだが、内外の影響を受けて変わっていく水納島。このあとはリゾートホテルが建設され、また景色が変わる。
そんな中、表紙と同じ構図を見つけることのできた邊土名さんは、満足げだったのか、この構図も見られなくなる未来に憂慮したのか。

水納ビーチでの海水浴



夕方より少し前、多くの観光客がフェリーにて引き上げた静かなビーチで、安里さん、ピンクさん、宮城さんは海へ飛び込んだ。
多くの人が魅了される美しいビーチは、間違いなく水納島の文化のひとつ。伊江島を望むロケーションも独自のものだ。



安里さんはGoProを片手に、水中から光を追いかけながら撮影し、宮城さんとピンクさんは、同じ沖縄でも別世界のような離島の海を楽しんだ。

夕陽が沈む水納海岸



夕方、別々に過ごしていた4人が、「ここで夕陽が沈むらしい」という情報から、湾のようになっている水納海岸に集まった。
「クロワッサンアイランド」と呼ばれる水納島の、内側の海岸線をまるっと見渡せる。

まるで湖のように静かな波打ち際で、海の向こうへ落ちていく光を見る。
写真に収める者、ただ座って眺める者、砂浜を歩く者。



やがて、誰かが作ったらしい即席のベンチに4人集まり、今日あったことをいろいろと語っているようだった。

夜の島 ─ 満天の星と、島の生き物たちと

夕食は宿のオーナー湧川さんの手料理。仲地さんも招き、参加者たちは島の風を感じる中庭で宴会を楽しんだ。
まだ今のように豊かではない時代の、食べられるものはなんでも食べたエピソードが、特に印象に残ったようだ。



その後、仲地さんの案内で夜の散策へ。
港に寝転ぶと、空は星で埋め尽くされ、街中からでも見つけやすいオリオン座が発見できないほどだった。
奇しくもこの日は、そのオリオン座に放射点のあるオリオン座流星群の発生時期。いくつもの流れ星を肉眼に捉えることができた。



散策中には夜行性のヤドカリや大きなカニが道を歩くのを目撃。昼とはまったく違う水納島の道路事情に、参加者たちは驚いた。



宿に帰ると、この間に湧川さんが確保した巨大なヤシガニが3匹。水納島からのサプライズは尽きない。
特に大きな1匹をその場で茹で、カニとも違う、エビ寄りの珍味をみんなでいただいた。

少し前まで生き物だったものが、次の瞬間には食べ物に変わる。しかもそれがたいへん美味い。
どの参加者にとっても、忘れられない体験として胸に刻まれたようだった。


>>Report〈後半〉へつづく


執筆・写真:照屋 寛佳

めぐるプロジェクト レポート一覧

0|オリエンテーション
1|芸をめぐる
2|心をめぐる
3|島をめぐる〈前半〉
3|島をめぐる〈後半〉
4|「 」をめぐる(準備中)



【本ページに関するお問い合わせ】

公益財団法人沖縄県文化芸術振興会 沖縄アーツカウンシル
「めぐるプロジェクト」担当(喜舎場・具志・橋口)
TEL:098-987-0926 
E-mail:info-ninaite@okicul-pr.jp

主催:公益財団法人沖縄県文化芸術振興会 (沖縄県受託事業「令和7年度沖縄文化芸術の創造発信支援事業」)