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2021.04.13 Tue

R2年度支援事業紹介:沖縄発の戯曲作品の活用を通して、沖縄の歴史的社会的課題に向き合い、モヤモヤと考える波を起こすきっかけ作り事業(AKNプロジェクト)

県産の戯曲で“モヤモヤ”する

 本事業は、1970年代に活躍した沖縄の劇作家・知念正真の作品を通して、差別や偏見、言葉、戦後など、沖縄・日本・世界のさまざまな問題について、老いも若きも共に「モヤモヤ」することが目的である。「何か結論を出す」ということではなく、当時と今を比べながら自身の生活と照らし合わせて「なんとなくみんなでモヤモヤしてみよう」という取り組みである。
 知念の代表作「人類館」は、1903年(明治36 年)に開催された大阪万博での「人類館事件」を題材とした戯曲で、沖縄戦や戦後の沖縄社会をウチナーグチやウチナーヤマトグチを交えて風刺的に描き、第22回岸田國士戯曲賞を受賞した。劇団創造によって長く上演されていたが、劇団員の高齢化などにより県内での上演機会は減少した。


演劇「人類館」の復活

 今年度は若い世代と共に、この「人類館」に触れながら戯曲をさまざまなテーマで読み解いてみる「モヤモヤイベント」と称したトークイベントを開催。「沖縄の女性のモヤモヤ~ようこそ女の館へ! 男性は聞いちゃダメ? ~」「沖縄と戦争のモヤモヤ」「沖縄と差別のモヤモヤ」「役者OB16年ぶりに『戯曲・人類館』を朗読して語ってみた」という4 つのテーマでトークセッションし、生配信を行った。スピーカーには韓国の文学研究者、ジャーナリスト、映画監督、フリーアナウンサー、劇団創造の元劇団員などが登場した。
 2月には西原町さわふじ未来ホールにて、2 チーム編成で全6回の「喜劇・人類館」の劇場公演を予定していたが、期間限定の収録配信に切り替えた。劇団創造の関係者を除いた演者での上演は初の試みであり、若い世代へ作品をバトンタッチするきっかけとなった。さらには、ウェブ配信することで、県外、国外へ向けても作品を届けることが可能となった。
 AKN プロジェクトでは今後、学校公演や公民館での巡業公演に対応できる若手チームの育成や、「人類館」の映像収録、オンライン上での発信の準備を行っている。それに加えて、念願の「知念正真全集(仮)」の出版も控えている。県産の文学作品が、世界に投げかけるモヤモヤを楽しみにしたい。

モヤモヤイベント配信チーム

担当プログラムオフィサーのコメント

今までの「人類館」とはあえて真逆のポップなビジュアルイメージで攻めた今回の「喜劇・人類館」。戯曲の内容との絶妙なミスマッチ?で、まんまとモヤモヤさせられました。差別や偏見は多くの場合、悪気がなく無意識。だから怖いし怖くない。「人類館」を知らない世代や、社会問題に興味がない方や、「どうせ世の中変わらないでしょ」と思っている方々にも、ぜひ触れてもらいたい戯曲。