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2022.07.22 Fri

アドバイザリーボードによる総評(団体/スタートアップ)|令和4年度沖縄文化芸術の創造発信支援事業

沖縄アーツカウンシルでは、令和4(2022)年度から「沖縄文化芸術の創造発信支援事業」を開始することに伴い、事業の選定及び評価・検証を担う「アドバイザリーボード」も新体制となりスタートいたしました。
今回の審査(団体/スタートアップ)における、アドバイザリーボードによる総評は、下記をご覧ください。

>>令和4年度採択事業一覧はこちらをご覧ください。
>>総評のPDFデータはこちらをご覧ください。

アドバイザリーボードによる総評

2022年度団体補助の選考について

 沖縄県文化振興会の沖縄アーツカウンシルにおいては、昨年度までの「沖縄文化芸術を支える環境形成推進事業」を引き継ぎ、本年度からは「沖縄文化芸術の創造発信支援事業」として、沖縄県の多様で豊かな文化芸術活動の持続的発展を図る取り組みを継続しています。
 今回は、3600万円の交付予算額に対して、団体22件、スタートアップ4件、計26件の応募の中から、団体9件、スタートアップ2件の計11件を採択しました。採択率は42%です。昨年度は約4240万円の補助額に対して、33件の応募から13件を採択(採択率39%)したため、本年度は予算額、採択件数ともに減少したものの、採択率は若干上昇しています。なお、本年度より、できる限り多様な団体に補助金を利用していただけるよう、団体枠での採択は、令和4年度から8年度の5年間に最大3回までという条件が加わっています。
 選考については、要件・資格審査を終えた申請について、アドバイザリーボードによるプレゼンテーション審査会を2日間実施し、3日目にボードメンバーが公募要領に公開されている基準に沿って採点を行ない、点数が上位の事業から予算額の枠内で採択しました。採択にあたっては、すべての事業について、ボードメンバー全員で議論を尽くしました。
 大変遺憾ながら全事業を採択することはできませんでしたが、煩雑な応募書類にもかかわらず応募して下さった全てのみなさまに感謝と敬意を表します。今後の計画や次回以降の再応募をご検討いただくためにも、評価項目の他に、とりわけ以下にご留意下さい。

  1. 本事業は、沖縄県全体の文化芸術活動の持続的発展を図ることを目的とし、それに資する活動を補助するものであることから、団体・スタートアップ補助に関して、個人や自社の従来の活動の一環と見受けられる事業については、本事業による補助の意義を認定することが必ずしも容易ではなかったこと。
  2. 本年度より、令和4年度から8年度の5年間に最大3回までの採択という条件が加わったことから、申請書に掲げられている現在の課題とその対策に十分な整合性が認められず、事業のねらいや団体の将来像と実際の事業内容に何らかの齟齬が見受けられる場合、再考を促す意味も込めて、高評価ができなかった場合があること。
  3. 事業実施の確実性、妥当性、事業の持続的発展の可能性が評価項目となっており、補助上限額も文化芸術分野では比較的大きいことから、団体の現在の状況に対して適切な事業計画と収支計画を策定し、補助希望額に反映することが望ましいこと。
  4. 本事業以外の補助金への応募がより適切と思われる事業も一部に見受けられたことから、申請にあたっては、沖縄アーツカウンシルへの事前相談が望ましいこと。

 採択された11件は、分野としては芸能、工芸、映像、アウトリーチなどがあり、那覇周辺のみならず、北部や離島で地域間の文化格差を是正したいという取り組みも見受けられ、幅広い年代と多様な団体からの応募がありました。採択事業から2つを紹介します。

[応募区分]団体
[事業区分]文化芸術を通じて地域の諸課題解決や活性化の促進等に寄与する取り組み
[事業者名]公益財団法人沖縄県女師・一高女ひめゆり平和記念財団立 ひめゆり平和記念資料館付属 ひめゆり平和研究所
[事業名]“ひめゆり”を伝えるワークショップ開発・実践プロジェクト
沖縄戦やひめゆり学徒の歴史に関する新しい発信型教育プログラムを構築する事業です。地域とともに、戦争体験の新しい伝え方、表現を生み出すという理念が明確であり、そのための計画と連携体制、補助希望額も現実的で、新しいモデル創出を期待できる事業です。

[応募区分]団体(スタートアップ支援枠)
[事業区分]文化芸術団体等の組織力向上・基盤強化に資する取り組み
[事業者名]古典企画
[事業名]琉球芸能実演家による共同のオンラインを使った魅力発信と稽古の提供
琉球芸能の若手・中堅実演家4名が共同でウェブサイトを運営し、オンラインでの情報発信とオンライン稽古体験の提供を行なう事業です。琉球芸能の現状分析と対策が明確で、沖縄の芸能分野全体の発展に資することを期待できる事業です。

 今回の公募に対する応募事業のクオリティと多様性は、沖縄が人材とアイデアの宝庫であることをあらためて証明しました。応募事業はもはや「文化振興」にとどまらず、文化芸術を通じて、沖縄の未来に向けて「新しい生活基盤」を構築しようとするものばかりでした。これは、現在の文化政策が目指す理想的な方向性とも合致しており、全国的にも先駆性のある特徴です。多くの事業を不採択にせざるを得ない現状は極めて遺憾であり、アドバイザリーボードとしては、県文化振興課にはこうした文化芸術の新たな社会的役割を明確に認識してもらい、それにふさわしい予算措置を講じていただくことを願います。
 沖縄アーツカウンシルが沖縄県の文化芸術に果たす役割はこれまで以上に大きくなっています。プログラムオフィサーのみなさんには、採択事業の支援のみならず、不採択後の関係性の継続や、県内の文化芸術関係者がともに学び合い、応募側と支援側がともに成長しながら次世代を生み出すような、新しい支援モデルの構築を期待します。沖縄の誇る人材とアイデアが混じり合い、高め合う、未来の礎としての文化芸術支援を願います。


沖縄アーツカウンシル アドバイザリーボード
仲田美加子、林立騎、宮城潤、若林朋子