2020.10.05 Mon
糸満の誇りを伝えていくために
古くから「海人(うみんちゅう)のまち」として知られる糸満において、その文化を保全し、次の世代へと受け継いでいく活動をしているのが、「糸満 海人工房・資料館」の管理運営をしている当団体である。ミーカガン(水中ゴーグルの原型といわれている)をはじめとする漁具の展示のほか、イチマングチ(糸満方言)を交えた歴史講和やサバニの乗船体験などは、地域の小学校や大学の教育プログラムとして活用されてきた実績を持つ。しかし、団体を牽引してきた上原謙理事長をはじめとするメンバーの高齢化により、活動は縮小傾向にある。イチマングチが堪能で海人と生活を共にしてきた世代は、その経験に裏打ちされた知見と話術によって講和を盛り上げてきた。世代交代にあたっては、継承の手法を再構築していかなくてはならない。本事業では、海人の文化を伝える人材を育成するとともに、その手法を開発する。また、活動を続ていくためにも、収益を得られるプログラムもあわせて創出していく。
若い世代が伝承者になれる、プログラムづくり
まず、上原謙理事長らによる巧みな講和を若手が引き継ぐために取り組んだのは、かつて海人であった山城久雄氏による鉛筆画を活用した講和プログラムの開発である。当時の漁法を的確に説明しながらも、海人の勇ましさを生々しいほどに表現した絵を見せることで、聴講者はより興味深く講和を聞き、理解することができる。また、実際に漁を体験する「パンタタカー体験」や、海人の知恵を生かした「防災キャンプ」、企業などの団体向けの「ロープワークチームビルディング」などのプログラムを開発・実施した。これらは、健康・福祉・教育・観光といった異分野の専門家からの意見を取り入れながら、今後も改良を重ねていく。
写真:(上)サバニの乗船体験をしているようす
(下)鉛筆画を見せながら、漁の方法を説明する
担当プログラムオフィサーのコメント
糸満 海人工房・資料館には、昨年度までにも何度か訪れていました。県外から観光に来た友人たちとサバニ体験をしたり、資料館を見学したり。突然始まる上原謙さんの講和で、予定していた滞在時間をかなりオーバーしてしまうのですが、そんなことは全く気にならないくらいエキサイティングなお話です。ミーカガンを装着しながら、海人の勇姿をとうとうと語るチャーミングな人柄にほれ込んで、通っている人も少なくないはず。そして今年度は、その意思を繋いでいくべく、次世代の事務局の方々が奮起して、採択につながりました。たくさんのプログラムを開発して、ますます面白くなる糸満 海人工房・資料館に一度は行ってみてくださいね!