2023.04.20 Thu
2023年3月26日(日)、沖縄県立図書館3階ホールにて、令和4年度沖縄文化芸術の創造発信支援事業の事業報告会を開催しました。
令和4年度に支援した22事業者をグループA~Dの4つに分け、事業を通じての成果や課題などを共有しました。会場には、令和4年度から新たなに支援枠を設けたスタートアップの4団体はじめ、名護や石垣から、また宮古島からはオンラインで参加した事業者もあり、約6時間に渡って成果報告を行いました。本レポートでは当日の様子をご紹介します。
*各事業概要については、下記の事例集(PDF)をご覧ください。
https://okicul-pr.jp/oac/wp-content/uploads/2023/03/R4_jireisyu.pdf
まず、区分2「文化芸術を次代に引き継ぐ新たな創造発信を伴う取り組み」の事業に取り組んだ団体5組が発表を行い、担当POの伴走について触れながら事業について報告しました。
クラシックでしまくとぅば実行委員会
担当POが客観的な視点で一緒に考えてくれることが励みになりました。ワークショップ講師にお招きしたウィーンの演奏家の、「互いを認め尊重し歩み寄る姿勢」を学べたのはとても刺激的で、沖縄の実演家が改めて自らのルーツを見つめた上で作品理解を深めれば、東京とは違うスタイルを探求できるのではないかと感じました。この成果を沖縄社会に還元できるよう前進し続けます。
一般社団法人おきなわ芸術文化の箱
「子どもたちや先生方が喜んで下さったこと」が本事業の意義であると改めて感じました。常に第三者の視点で担当POが事業を見通してくれたので心強かったです。今年は無料公演でしたが来年度以降は自走化が目標。今後も沖縄アーツカウンシルにお力添えいただき、予算や教育現場との連携等課題を乗り越えていきたいです。
首里劇場調査団
ご支援いただけたことで、沖縄文化の中でも価値ある取り組みだ、とお墨付きをもらった気がします。特に私は「あれもこれもやりたい!」と暴走しがちなので、担当POが止めてくれ助かりました。「調査報告の成果を新聞で提案しないか」と嬉しいお話も頂戴しています。今後は、今回構築したWEBサイトを活用して情報発信にも力を入れていきます。
琉球芸術企画
担当POには色々助けてもらいましたし、それ以上に、私達の思った通りにやらせていただいたと感謝しています。目標集客数に届かなかった点は反省しつつ、引き続きオンラインを活用したつながりを取り入れながら、沖縄から世界のウチナーンチュへ向けて発信していきます。
シマヲツナグ。実行委員会
イベント当日は6,000名余の方にお越しいただきました。偶然、担当POが宮古島出身の方もいたので、様々な方々を巻き込むことができました。今後は子ども達がもっと関われるようなプロジェクトへの成長を目指したい。将来は若狭公民館のような「子ども達の集い場」を創ることも目標です。
次も同じく、区分2「文化芸術を次代に引き継ぐ新たな創造発信を伴う取り組み」の事業に取り組んだ個人事業主6名が発表。今回の事業成果に加え、本支援事業の枠組みについて、一人で事業を行う個人事業主ならではの問題点についても提言がありました。
中野 夢さん
本島はじめ八重山へも出向き、黒朝衣の採寸・撮影・繊維拡大調査、所有者聞き取り等を実施しました。ですが黒朝衣を拝見させていただくまでが大変な道のりでした。より多くの黒朝衣と出会えるようWEBの「黒朝衣辞典」で情報発信しつつ、展示を企画し多くの方々と情報を共有していきたいです。
屋宜 久美子さん
教育現場に携わる方を対象にワークショップを行い、「ものづくりの楽しさを思い出した」という声を参加者からいただきました。今回初めて支援を受けましたが、一人だと情報発信まで手が回らないので、「発信の部分」をもっと沖縄アーツカウンシルに担ってもらえたらありがたいな、と感じました。
普天間 伊織さん
7歳〜24歳の方々にご参加いただき1ヶ月間のワークショップを実施し、全員で成果発表の舞台に立つことができました。今年は自主企画のワークショップを開催予定です。私も個人事業主ですから、仕事との兼ね合いが難しかったです。提出書類をもっと簡略化できたら負担が減るのかな?と感じます。
儀間 梨以奈さん
お客様から、「障がいがあるなしは気にならず、作品として見ることができた」と声をいただきました。沖縄文化とバレエ、異なるジャンルのコラボだった為、互いに「削る、譲る」ことが求められましたが、動画再生数も1,500回を超えて目標達成!今後に手応えを得ることができました。
比嘉 誠さん
YouTubeにアップしているので、とにかく映像を見て欲しいです。今年9月の旧暦八月十五夜に15分超の演舞をカメラ8台で撮影予定で、それが一旦ゴールになると思います。撮影以上に、書類作成や申請プロセス自体が難し過ぎました。書類作成の為に仕事を断ったし、正直収入にも影響がでました。このままでは時代にフィットしていないのでは?と思います。
野村 恵子さん
県外からの応募も多く、お断りするのが辛かった。参加者は講師から「撮ること、撮られること」等を学び、本当に熱く盛り上がりました。今年は参加者、講師による写真展を実施予定です。私も本当に書類作成が大変で、これは支援と言えるの?と疑問に感じました。個人事業主としては厳しい内容でもありました。
続いて、区分1「文化芸術団体等の組織力向上・基盤強化に資する取り組み」の事業に取り組んだ団体2組と個人事業主4名が発表。八重山花織事業協同組合は、本事業で復元したティサジをご持参・展示くださり、来場者の方が手に取って質問する姿も見られました。
八重山花織事業協同組合
失われた手仕事は復元が大変難しいので、本事業で得た花織ティサジの成果は記録として責任を持って管理していきます。実は県内の織物産地はどこも後継者不足の問題を抱えていますので、その意味でも本事業がチャレンジのきっかけになったと感じています。
沖芸大琉球芸能専攻OB会
組織強化の為の意識調査を実施し、会員の不安や目指す方向性等、意見を集約・可視化できたのが一番の成果です。同じく琉球芸能も後継者不足です。もっと子ども達に琉球芸能をみてもらえる機会を創出したいのですが、どう教育現場にアプローチするのか難しく、課題となっています。
古典企画
構築したHP等を活用し、1対1のお稽古やグループレッスン、県外・海外向けオンラインレッスンを実施した他、目標だった合同稽古も開催。「ここまでできるなんて」と受講者から嬉しい声をいただきました。今回ご縁があって、沖縄盲学校で体験型のミニコンサートを行い、大変好評で手応えを感じています。新たなファン開拓だけに留まらず、「社会の為に何ができるか」という視野も獲得できたチャレンジだったと感じています。
内間 千尋さん
成果発表会の舞台では、学んだ扮装と化粧の技術を活かそうと参加者は頑張ってくれました。事業に挑戦したことで、今後の研鑽に活用できる貴重な資料としてまとめることができたので、対象を広げて勉強会の数を増やし、一つでも多く舞台を創っていきます。私自身も視野が広がりました。
桃原 夏子さん
完成したミニドラマはYouTubeにアップしているのでぜひ見て下さい。コロナ禍で仕事が激減し、「自ら仕事を立ち上げなければ」との危機感から始めた取り組みでしたが、「ミニドラマをもとに舞台をやらないか」と新規の仕事にもつながり、私達を知らなかった方に発信できるコンテンツに成長したと実感しています。資金の問題はありますが、今後、WEBサイトの立ち上げも目標です。
チカ・コーポレーション 古谷 千佳子さん
空手の型にある身体操作のメカニズムをデータ化した上で撮影に挑めたので、ポイントを絞り的確に撮影できました。展示会「カラテとカラダ」には5日間で1,500名にご来場いただき、道場開設の為の写真の撮影依頼や武道館系雑誌からオファーも頂くことにつながりました。これからも写真も空手も鍛錬し、被写体の皆様とwinwinで表現していきます。
最後に、区分3「文化芸術を通じて地域の諸課題解決や活性化の促進等に寄与する取り組み」の事業に取り組んだ団体5組が発表を行いました。
コザ十字路通り会
当初は地元の方をどう巻き込むか悩んでいましたが、偶然出会ったダンススクールの子ども達のおかげで出演者が集まりだし、脚本を書き換えながら撮影を進めました。完成した映画を鑑賞した子ども達から「銀天街のことを知れた」「地域を盛り上げることに参加でき嬉しい」と声をいただきました。今年は銀天街だけでなく、東京、名古屋等でも上映していけたらと考えています。
株式会社918
上映後、ろう者の方が「どこにでも見にいくほど映画が好き。字幕があって本当に助かった」と感想を話してくれました。この上映会に参加した『ミラクルシティコザ』の平一紘監督が、感想を聞いて「まだ届いていない方がいたんだ」とおっしゃっていて、素晴らしい気づきを得ることができたと思っています。
公益財団法人沖縄県女師・一高女ひめゆり平和祈念財団立ひめゆり平和祈念資料館付属 ひめゆり平和研究所
ワークショップに参加した学生から、「あの戦争って、アメリカが勝ったんですよね?」と聞かれたのが一番の成果でした。我々の常識ではなく、学生の視点で思考できるかが重要だからです。今回の経験を活かして、来年はハワイへ出向き作成したワークショップを展開してみたいです。
特定非営利活動法人琉球交響楽団
参加した学生は、「もっと一緒に演奏したい」とか「練習すれば上手くなれる」と話していたそうで、大編成で演奏する喜びや刺激を届けることができたと感じています。地域の皆様や公民館の協力のもと、誰もが気軽に足を運べるコンサートを実施でき手応えを得ることができたので、引き続き継続して開催し、これを楽団の定期演奏会の集客にもつなげて行けたらと思っています。
くらしの中の海洋文化実行委員会
4回開催したオンラインイベントでは、講師から船にまつわる目から鱗のお話を聞くことができました。サバニの体験乗船は台風に苦しめられましたが、反響が大きかったです。今回挑戦して多くの学びとネットワークを構築できました。来年完成予定のサバニは多くの方に使って欲しいし、将来は子どもだけで乗れる小型のサバニも造ってみたいと構想中です。
■宮城 潤 委員
各事業者の皆様が「ここにアプローチが必要だ」と想定した部分に、ご苦労されながらも真摯に取り組まれたこと、また活動の幅が広いことも印象的で、改めて本事業の意義を感じました。次年度につながるような希望が持てる成果が上がっていたことも心強かったです。同時に、この枠組み自体に対しての提言もいただきました。沖縄アーツカウンシルは11年目になり個人的には、以前と比べて活動しやすい状況も整ってきたと思いますが、公金を扱う上での手続上の課題があるのは事実。事業者のニーズに応えられる枠組みであるかどうかについて、報告会の場で問題提起があったのは重要なことです。ご指摘は事業者の皆様、沖縄県、県文化振興会、我々アドバイザリーボード、皆で考えて、新しい形を模索・提案し続けなければならないと思います。
■仲田 美加子 委員
一人ひとりが沖縄の文化活動を強くしていく為の人材であると感じ、心から敬意を表します。胸が痛かったのは、那覇市首里末吉町の獅子舞ドキュメトの撮影に挑戦する比嘉さんのことです。事業者がご苦労している部分を理解して、皆様が力を存分に発揮できるような環境にしていきたい。手続き書類の複雑さを軽減するよう沖縄アーツカウンシルも努力しなければと感じます。この小さな積み重ねが、社会全体の文化環境基盤を強くしていくことに近づいていくわけですから、この課題を一緒に解決していけたらと感じました。今後も皆様どうかお体に気をつけて、目標に向かって諦めずに、つながって、一つひとつ夢を実現して社会を強くしていきましょう。そうすることで世の中は変わっていきます。
■林 立騎 委員
私は4年程前から沖縄アーツカウンシルに関わっていますが、この4年間は支援先が無いどころか新しい取り組みがどんどん立ち上がり、更に盛り上がっていると感じています。個人事業主の方から「一人では広報まで手が回らない」との声がありましたが、皆様の活動を一体どれくらいの県民が知っているのか?ということなんですよね。沖縄アーツカウンシルの広報機能を強化して、事業者に代わって発信できるような仕組みづくりができたら良いなとお話を聞いて感じました。本事業は文化芸術支援の枠組みですが、中には観光、教育、福祉の要素を持つ活動もあるので、県や文化振興会が県の他セクションへつなげるような役割を担えると、新しい展開に持ち込める取り組みが出てくるかもしれません。どこに、どんなアプローチができるのか私も考えながら、引き続き皆様の活動を応援したいと思います。
■若林 朋子 委員
「税金を使うからには成果を出さなければ」とプレッシャーもあったと思いますが、それぞれに目標を実現されていました。「ハンズオン支援」は、ともすると過干渉になることもあります。でも、今日、皆様の報告を伺った限りでは、事業者の皆さんとPOとの間に良好な関係が築かれているようでした。そこが沖縄アーツカウンシルのハンズオンの良いところで、特徴なのかもしれません。報告書の PO コメント欄も愛に溢れています。PO の皆様にも「伴走お疲れ様でした」とお伝えしつつ、担当する事業者の方に正面から向き合って良い事業にできたらと思いました。貴重な日曜日に皆様にご足労いただきましたので、私のコメントは早々に切り上げて、参加者の名刺交換会をしましょう!ここがつながったら面白い!と思う事業者の方々もいたので、ぜひ交流してください。
執筆:具志堅 梢