2020.10.07 Wed
民間の小劇場を交流拠点に
平成 29 年 7 月に那覇市銘苅にオープンした「アトリエ銘苅ベース」は、80 席ほどの小劇場である。本補助事業を活用し、劇場空間を活かしたさまざまな取り組みで、県内演劇界の可能性を掘り起こしている。提携カンパニーとして県外劇団の公演が月 1 回程度実施されるなど、全国の演劇シーンでも注目の場所となっている。
支える人が集まり、ネットワークが広がる
技術スタッフの育成にも力を入れている。おきなわ芸術文化の箱のスタッフが講師として、機材の基本的な取り扱いや効果の出し方などを実践的にレクチャーする技術講座を開催。どの講座も、すぐに定員が埋まるほど好評であった。
夏には高校演劇との連携事業があった。県大会の優秀校に劇場を提供。さらに、演劇サマーキャンプには、演劇部の無い高校や遠方の高校からも参加があり、半数近くがアトリエ銘苅ベース 2 階に宿泊。昼食と夕食は参加者全員で食事をとるなど、演劇にどっぷり浸かる濃密な 5 日間の合宿を開催した。
講師のサポートのもと、脚本・演出・演技・音響・照明・舞台など、上演に関わる全てを参加者で担当。約 30 名の高校生たちが 2 班にわかれ、ひとつの題材をそれぞれの解釈で作品として作り上げた。
演劇関係者以外の一般の方々と作品づくりをすることもある。今年度は、終戦直後に首里儀保町に立ち上がった「ニシムイ美術村」を題材とした地域連携劇を上演した。稽古に入る前には、美術村をよく知る専門家を迎え、公開勉強会を行うなど、作品に対する理解を深めた。
県内劇団の活動や課題などの調査にも取り組み、舞台制作者の定期ミーティングで報告会を実施、意見交換や情報共有が活発に行われている。着実に、特に若い世代で、連携が広がってきている。昨年度に引き続き、県外の各種ネットワーク会議にも参加。提携カンパニーとして年間 11 団体の劇団がアトリエ銘苅ベースにて公演を行うなど、成果が表れてきている。
担当プログラムオフィサーのコメント
団体の強みは、発想の柔軟性と実行力。会議のたびに新しいアイデアが飛び出し、実行に結びつけます。
良い意味で劇場っぽくない(親戚の家のような…)雰囲気も皆を惹きつける魅力のひとつ。銘苅ベースから全国へ仕掛けていった全国小劇場ネットワーク会議からは、民間劇場のネットワークを基礎に、マーケットの創造事業に取り組んでいくワーキンググループが立ち上がり、今年度から始めた県内の制作者ミーティングからは、劇場のオフシーズンを活用した劇団や演劇の枠を超えたイベント企画を考える動きも生まれてきました。